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研究

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福岡大学

蛇毒の生化学 ~毒素活性を制御するシステム解明を目指して

2020年6月22日

取組概要

ヘビの約3700種のうち約600種が毒ヘビに分類される。ここ10年間で、網羅的な質量分析やゲノム解析により、毒ヘビ種間では毒素成分(主にタンパク質)の種類が大幅に異なり、種内では生息地域によって成分量の比率が異なることがわかってきた。これまでのへび毒素科学は、主に致死活性が高い毒素成分に着目してその単一成分を精製し、被食者、または我々哺乳類の生体に対する作用機序について議論されてきた。しかしながら、実際は、毒液中の多種多様な毒素タンパク質ファミリー群は複雑であり、それは年間5百万人以上の被害者を出す毒ヘビ咬傷の治療を困難にする大きな原因である。そのような研究背景の中、毒腺中で毒素活性がOFFに、獲物の生体内でその活性がONになるしくみや、また、毒ヘビが自己の毒に対する耐性システムに興味をもち、その役割を担う分子の同定とその抑制機構の解明を行っている。具体的な研究内容の一つは、毒ヘビの血液タンパク質の生理機能の解明である。私たちは、毒ヘビ血液中よりヘビ毒素を阻害する新規タンパク質群を発見し、それらは、それぞれ異なる毒素タンパク質に対して、高い結合特異性と阻害能を持つことを明らかにした。さらに、それら毒素阻害活性を示す血液タンパク質群は、毒素分子と同様に加速的な分子進化を経て多様化してきたことを証明した。私たちは、毒ヘビが毒腺において毒を作るために特化したシステムを持つと同時に、自分の毒が偶発的に血液中に入った場合に備えて、効率よくその毒素活性を抑制できるシステムを血液循環系に備えていることを提唱している。

成果

毒ヘビ血液中の毒素阻害タンパク質と毒素の複合体の立体構造解析に成功し、どの領域が毒素に対する特異的結合に寄与しているのかの詳細を明らかにした。この成果は、毒素活性の抑制を特異的に行うことができるペプチド設計を可能とし、毒ヘビ咬傷被害の新規治療薬開発の提案につながることが期待できる。また、私たちのこれまでのヘビ毒が持つ自己の毒に対する耐性システムを分子レベルで解明した研究成果は、2019年に国際学会および国内学会において奨励賞を受賞するなどの評価を受けている。

新規有毒生物の自己の毒に対する耐性システムの解明への波及効果、および毒素特異的阻害剤作成を可能にする。


※この取組は、提言・事例集『私立大学理工系分野の研究基盤の強化と向上-科学技術イノベーションの推進に向けて-』で紹介した研究事例です。
詳細等は関連リンクをご覧ください。

関連リンク

https://www.shidairen.or.jp/topics_details/id=2822

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