取組概要
ロボットや機械は一般に、機械工学、電気工学、電子工学、情報工学を統合したシステムであり、精密さ、速さ、硬さを兼ね備えており、工場や産業分野において大変役立っている。私は従来の機械とは異なり、やわらかさを有する新しい機械システムを目指している。このような分野はソフトロボティクスと呼ばれ、国内外で注目を浴びている。特に人と機械を融合するための新しい技術や価値創造が期待される。US、 EU、 UKにおいて大型プロジェクトが走る中、科研費の新学術領域研究においてもソフトロボット学が立ち上がった。私は計画研究の代表者として参画しつつ、総括班としても本領域のマネージメントをしている。ソフトロボット学は、従来のメカトロニクスを基礎とした機械システムではなく、マテリアル、化学、物理、情報学、機械工学、メカトロニクスの様々な分野の融合によって成立する異分野融合型の学際研究となる。そこで、海外の研究グループとマテリアル、応用物理、機械工学を融合した共同研究を実施した。
成果
機械を設計する上で、エネルギーを変換し運動を生成するためのアクチュエータは重要な機能の一つである。ソフトロボットにおいて、流体型ソフトアクチュエータは重要な技術になる。一般に流体アクチュエータは、コンプレッサやポンプを必要とする。この外部装置を完全に電気駆動型にすることができれば、自律型のソフトロボットや柔らかい機械が実現できる。そのような研究背景の下、EPFLの研究グループと電気駆動型・伸縮性のポンプとソフトアクチュエータを実現し、その成果がNature誌に掲載された(V. Caccucioloet al., Nature 572, 516-519,2019.)。柔らかいポンプは極めて軽く、エネルギー効率が良く、静音駆動する。さらに従来のポンプと出力が同程度であることが分かった。
人と機械を融合するための技術として展開する予定である。例えば、静音駆動の特徴を生かしスマート義手も一つの応用となる。また、温度制御可能なスマート衣類なども面白い展開だと考えている。
※この取組は、提言・事例集『私立大学理工系分野の研究基盤の強化と向上-科学技術イノベーションの推進に向けて-』で紹介した研究事例です。
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