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東京都

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研究

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他大学

慶應義塾大学

オキシトシンを「見える化」するツールの開発と応用に成功-謎に包まれた脳内オキシトシンの働きの解明に新たな光-

2022年8月29日

取組概要

慶應義塾大学医学部薬理学教室の塗谷睦生准教授、横浜国立大学環境情報学府博士課程前期2年の中村花穂、慶應義塾大学医学部薬理学教室の唐澤啓子(研究当時)、同大学医学部薬理学教室の安井正人教授らの研究グループは、これまで直接見ることができず謎に包まれてきた、脳内のペプチド性ホルモンの一種であるオキシトシンを「見える化」するツールの開発と応用に成功しました。

成果

オキシトシンは、分娩促進や授乳促進、母性行動などに関与し、母親が子を産み育てる上で重要なホルモンとして知られてきました。さらに近年、これらの効果に加え、日常生活の中で人間関係を築いていく社会的行動においても重要な役割を持つことが明らかにされ、ヒトを含む動物の精神を強力に調節する、脳内の神経伝達物質としての役割が注目を集めています。闘争欲や恐怖心を減少させ他人に対する信頼感を増加させる効果や、自閉スペクトラム症の中核症状である社交性を改善する効果から、一般的には「幸せホルモン」や「愛情ホルモン」という名称でも親しまれ、とても注目されています。

しかし、オキシトシンはその重要性にもかかわらず、脳内における作用部位や動態が謎に包まれてきました。これは、オキシトシンが無色透明で、分子量が非常に小さいため、通常「見える化」に用いられる蛍光標識(タグ)を付加すると、オキシトシン本来の動きや性質に影響を与えてしまい、真の姿をとらえることができないからでした。本研究では、これらの影響を最小限に抑えた極小タグであるアルキン(アセチレン系炭化水素)をオキシトシンに付加した「アルキンオキシトシン」の開発に成功しました。さらに、この新たな「見える化」ツールをさまざまな条件下でマウスの生きた脳組織に適用することにより、これまで謎に包まれてきたオキシトシンの脳内における作用部位や時空間的動態をとらえることに初めて成功しました。

本研究で開発した新規ツールは、オキシトシンに限らず、同様に脳内で重要な役割を持つペプチド性神経伝達物質一般に広く応用できることも確認されました。したがって、本研究成果により、オキシトシンをはじめとするさまざまな伝達物質が見える化され、まだまだ謎の多い精神機能の分子基盤への理解が深まり、脳研究を大きく前進させることが期待できます。

関連リンク

https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2022/8/26/28-126463/