取組概要
2022年10月19日(水)、文京区と日本女子大学社会連携教育センターとが連携して、文京区防災士・防災リーダー全体会「文京避難所大学」を文京区民センターで開催しました。
災害後の避難所は人々が家を失って身を寄せる大切な生活の場であり、首都直下地震発生時には200万人を越える人々が暮らす場所。その避難者人数の多さ、災害発生後すぐに必要となる場所ということで、生命と生活を守る上で早急な対応が求められています。特に住民が主体的に協力する共助が実現できないと、避難者が安心して生活できる場ではなく、たくさんの人の生命と生活がかかっている運営のむずかしい場所でもあります。
そこで避難所を支援・運営するためのスキルを備えた区民リーダーを育成するための教育プログラム「避難所大学」を、住居学科 平田京子教授と石川孝重名誉教授が開発しています。これは市民による主体的・協働型避難所運営を可能にする教育プログラムで、本学オリジナルです。今回は、文京区の33の避難所、約3万人が暮らす避難所を対象に、住民のなかから支援者を育て、文京区の避難所が自主的に住民の手で円滑に運営できるようにするためのプログラムを開発し、文京区と共同開催しました。
コロナ禍で、2019年度から本格化したこの「避難所大学」は、2020年度に中断、オンラインでの実施をふまえて、今年度ようやく開催にこぎつけました。自治体と大学の連携型プロジェクトとして、さらに大学生も複数参画する大きなプロジェクトに育ちつつあります。
成果
文京区と連携して実施しているため、文京区の各避難所の運営リーダー、町会から推薦されて防災士資格を取得した方々、町会役員、区議会議員などから約50名もの参加者があり、広い会場ではいくつかのテーブルに分かれて活発に議論が行われました。ワークショップ型の勉強のため、町の中で活躍する多世代の人々が熱心に避難所のこれからについて意見を述べていくのが特徴で、その意見はその場でシェアされていきます。
文京区内にいる多くの防災リーダー人材と一緒に活動するチャンスが生まれており、避難所の運営をまかされている役員の方々も、支援者として入りたい方々も一緒に議論し、どのようなことをどのタイミングで行うか、災害後のイメージをつくっていきました。
また今回の避難所大学で教材に用いたのは、文京区が全避難所に配備を完了している「文京区避難所開設キット」であり、このキットの開発当初から平田京子研究室が参画し、キット内容について文京区と協働してきました。キットを使うことで、区民の方々が実際の避難所の運営がどのようなものか検討できるようになり、訓練で開設作業を実際にやってみることができるようになりました。また避難所大学では運営本部・支援を担う方々がその詳細を判断できるようになり、より質の高い避難所をつくる試みの段階にシフトしてきています。各避難所ではこの文京区避難所開設キットを用いた開設訓練が全避難所で順番に行われており、避難所を舞台に、住民が主体性をもって動き出すしくみ、動き出しやすくする試みが続いています。
またこれらのプログラムを応用した研究開発として、日本女子大学は、妊婦と0歳児のお母さんを保護する妊産婦・乳児救護所に指定されている4大学の1つでもあります。文京区の開発した救護所開設キットをもとにした、妊産婦・乳児救護所の日本女子大学専用開設キットの開発を本学学生が授業や卒論を通して行っています。実際に使われるキットなので、0歳児をおもちの家庭のニーズなどもふまえつつ、本学の現状に合わせ、お母さん同士の共助実現をめざしてアップデートするための研究・実践活動が今、まさに進行中です。