取組概要
商学部の授業科目の一つである『スポーツ・ビジネス・プログラムB2(グローバル・スポーツ・ビジネス・キャリア)明治安田生命協賛講座』の履修生がドイツに渡航し、提携先であるブンデスリーガ所属フォルトゥナ・デュッセルドルフにて、スポーツビジネスの最前線を学びました。
本講座は、中央大学商学部がドイツのブンデスリーガ所属のプロサッカークラブであるフォルトゥナ・デュッセルドルフと提携して、スポーツビジネスに関する実地研修を行っています。2021年度に開講しましたが、新型コロナウイルスの影響で2年間オンライン開講となり、2022年度から渡独が実現しました。今年度も2月22日~3月1日の日程で選抜された10名の学生が渡独しました。
【研修内容】
2024年2月22日~3月1日 昨年度に続きフォルトゥナ・デュッセルドルフでの実地研修が行われました!
実地研修ではフォルトゥナDNA、ファン対応、チケッティング、マーケティング、CSR、ユースアカデミーに関する講義があり、質疑応答や学生同士のディスカッションを通して、スポーツビジネスへの理解を深めました。
デュッセルドルフ市庁舎に訪問し、市長のご挨拶の後、デュッセルドルフと日本の繋がりについて講義を受けました。
4日目に行われたホームゲームでは31,188人の観客が訪れ、ドイツサッカーのスケールの大きさ、そしてフォルトゥナと地域の密接な関係を体感することができました。
研修の途中では日本人選手との交流があり、質問コーナーやサイン会、フォトセッションが実現しました!質問コーナーでは、選手たちの意外な回答に現場は大盛り上がりとなりました。
<研修1日目>
初日は、会長のAlexander Jobst(アレキサンダー・ヨブスト)氏の歓迎の言葉でスタート!
フォルトゥナ・デュッセルフへの想いをお話し頂きました。
フォルトゥナDNAの講義では、廣岡太貴氏から、フォルトゥナの歴史、日本との関係性、ファンとの繋がりだけでなく、3年間かけて3000人の以上のファンや会員にインタビューし、設立したフォルトゥナDNAについても学びました。
また、ファン対応の講義では、Kevin Hallebach(ケヴィン・ハレバッハ)氏から、試合時のセキュリティー管理やハンディキャップを持ったファンへの対応を例に、クラブの発展にはファンとクラブの協力が必要不可欠であることを学びました。
講義後にはスタジアムツアーがあり、普段では入ることのできないロッカールームやピッチ横のベンチ、スタジアム設備を見学することができました。
開閉式屋根の仕組みやスタジアム内のベンチの色の秘密について知ることができ、参加者からは喜びの声が上がっていました。
<研修2日目>
2日目は、ブンデスリーガ1部のボルシアMGとVfLボーフムの試合を観戦しました。
試合開始3時間前から公共交通機関は両チームのサポーターで溢れ、町中に応援歌が鳴り響いていました。スタジアムには53,196人の観客が訪れ、高揚感に包まれました。
日本人選手が出場していたこともあり、非常に盛り上がった試合観戦となりました。
<研修3日目>
研修3日目は、初日のフォルトゥナDNAとファン対応をめぐるディスカッションを行いました。ディスカッションではフォルトゥナDNAをさらに浸透させるにはどのような取り組みができるのか、ドイツサッカーにおける地域クラブへの帰属意識の高さを日本にどう反映できるのかについて、様々な意見交換が行われました。
また、午後にはフォルトゥナ・デュッセルドルフのホームゲームがあり、フォルトゥナ・デュッセルドルフとハンザ・ロストックの試合を観戦しました。初日の講義で教わったフォルトゥナDNAやファン対応の視点からも試合観戦を楽しみました。
試合はミドルシュートを決めた田中碧選手の活躍もあり、2対0で勝利しました!
<研修4日目>
チケッティングの講義では、Laura Schulze(ローラ・シュルツ)氏から、工夫されたチケット販売について学びました。チケット代に公共交通機関利用料が含まれていたり、シーズンチケット所有者が不都合で試合に行けない時は、アプリでその試合のチケットを売ることができる仕組みがあったり、無料観戦試合を実施したりと真新しい取り組みを紹介頂きました。参加者からは特に無料観戦試合について多くの質問がありました。
マーケティングの講義では、Daniel Schröer (ダニエル・シュレーヤー)氏から、フォルトゥナ独自のマーケティング戦略、パートナーシップの重要性を学びました。
放映料、チケット代の高騰やスポンサーの役割変化など、サッカーのビジネスモデルが変化している中で、クラブを成長させるためには何が必要かお話頂きました。
<研修5日目>
研修5日目は、デュッセルドルフ市庁舎を訪問しました。Stephan Keller(シュテファン・ケラー)市長からのご挨拶の後、デュッセルドルフと日本の関係性についてお話し頂きました。Japan Tag(日本デー)には65万人の参加者がいると知り、デュッセルドルフにおける日本コミュニティーの大きさに参加者からは驚きの声が上がりました。
午後のCSRの講義では、Nina Joachim(ニーナ・ヨアヒム)氏、Claudia Beckers(クラウディア・ベッカーズ)氏から、持続可能性をファン、職員、選手に伝えて行く重要性について学びました。試合時の飲み物にデポジット制度を導入したり、デジタル会員証により紙の入場券を減らしたり、VIPルームで残った食べ物を食に困った人達に提供したりする取り組みがあり、クラブとして積極的に地域貢献活動に参加していることが分かりました。
CSRをめぐるディスカッションではJリーグクラブがドイツのようにCSRを能動的に行うためにはどうしたら良いかについて議論が白熱しました。
<研修5日目>
ユースアカデミーの講義では、Stefan Vollmerhausen(ステファン・フォルマーハウゼン)氏とChristian Reischke(クリスティアン・ライシケ)氏から、選手と監督の育成・管理について学びました。サッカーの技術だけではなく、サッカー外での振る舞いや行動にも重きを置いており、勉強面、生活面での成長も責任を持って管理している点に、参加者は驚いていました。
その後の施設見学では、トレーニングルームやメディカルルーム、ロッカールームを見学しました。ユース世代の施設とは思えないほどの充実した設備・環境があり、育成年代に力を入れてクラブ、そしてドイツサッカーを強化するという取り組みを目の当たりにしました。
<日本人選手との交流>
ホームゲーム翌日にはクラブのご厚意により、フォルトゥナ・デュッセルドルフに所属する日本人選手(田中碧選手、内野貴史選手)との交流会が行われました!質問コーナーでは、「日本とドイツどちらが好きですか」や「ドイツで一番好きな料理は何ですか」、「一緒にプレーしたい選手は居ますか」など様々な質問があり、一つ一つ丁寧に、冗談も交えつつ、気さくに回答頂きました。日本を代表する選手との交流に研修一番の盛り上がりとなりました。
成果
【受講生の声】
クラブの理念、ファン対応、チケッティング、マーケティング、CSR活動、ユースアカデミーとクラブ運営を構成する様々な要素を現場で働いている人の声を聞き、工夫している点や課題点、また日本と比べてどうなっているのかなど、日本では経験のできない学びをすることができました。また、実際にフォルトゥナ・デュッセルドルフのホームの試合を観戦し、学んでいることがどのように実装されているか、地域にとってフォルトゥナ・デュッセルドルフがどんな存在なのか、良く理解できました。これは現地に行き、ファンの声や行動、建物や壁に描かれているフォルトゥナ・デュッセルドルフのエンブレムなど五感で感じなければ、正しくは理解できなかったことだと思いました。
ドイツにおけるサッカーのあり方やファンのクラブに対する熱量、またドイツ特有のフェラインという組織のあり方を体感できました。ブンデスリーガの試合を2試合観戦させていただきましたが、スタジアムに向かうシャトルバスの中でファンがチャントを大声で歌っている様子や、興奮のあまり試合前からフェンスを破壊しているファンの姿に圧倒されました。チームに対する思いの強さを感じると共に、それだけドイツではファンがサッカーや応援するクラブを家族のように自分ごととして捉えている、ということがわかりました。そしてその背景にはドイツ特有のフェラインという組織の在り方が関係しているということがわかりました。
さまざまな分野の講義を聴き、ドイツ、フォルトゥナで行われていることは、その土地柄、人柄を踏まえてのことであると考えました。そのため、日本のサッカー界に持ち帰るには、デュッセルドルフの土地柄、人柄の分析、そしてその分析結果とフォルトゥナの取り組みを結びつけ、日本の土地柄、人柄との共通点だったり、日本ならではの特徴を探したりして、日本のサッカー界だったらどのように取り組めるのかを考えていくことが必要であると感じました。
この研修を通して同じ方向性を持つ仲間や教授、フォルトゥナ・デュッセルドルフで働く方々と出会えた事が大きな成果だと言えます。フォルトゥナ・デュッセルドルフで働く方々の仕事への姿勢やクラブへの思いが研修を通して伝わり、仕事への向き合い方なども見て学ぶことができました。また海外で働く日本人の方のお話を聞けたことはとても価値のあることで、自分の価値観や視野が広がったと思います。
【担当教員からのメッセージ】
2024年も昨年に引き続き、渡独したうえで充実したスポーツビジネスの研修を受けることができました。フォルトナ・デュッセルドルフのクラブ関係者の皆様の献身的なご対応により、中央大学商学部の10名の学生たちは、フォルトナのフィロソフィ、ファン対応、チケッティング、セールス、CSR、およびユースアカデミーについて深く学ぶことができました。ここで得た知見を、日本あるいは世界のサッカー界、スポーツ界に羽ばたく際に役立ててくれるものと確信しております。1週間に及ぶ研修において、多大なるご協力をいただいたフォルトナ・デュッセルドルフの関係者の皆様には、心より御礼を申し上げたいと存じます。