取組概要
工学部の青森久研究室と藤田実沙研究室は9月24日、朝日新聞名古屋本社統括チームの山田理恵氏を講師に招き、講義を行いました。本講義は、「キャリア教育共創プログラム※」の一環として実施されました。
成果
山田氏は、自身の経歴とこれまで携わってきたニュースを紹介しました。朝日新聞社は全国高等学校野球選手権大会を主催していることから、岩手県配属当時の高校野球の取材について紹介。さらに北海道へ配属後の食品偽造事件について、当時を振り返りました。地方で事件、事故、災害、スポーツ、政治など携わり経験を積んだのち、本社勤務となりました。山田氏は「環境と公共事業」に関心を寄せ、原子力発電や米軍基地などの記事を執筆するようになりました。その後東日本大震災があり、原子力発電が全国最多の福井県に配属。原子力発電は、技術問題だけでなく、地域社会との関わりが強いものという認識に。その後1年間休職し、原子力発電所数が世界一のアメリカで取材を進めました。
原子力発電を推進する立場の専門家へ取材し、「専門家が考える"危険"と、一般人が考える"危険"は異なります。専門家は、一般人の感覚を理解することが大切」だとする意見を紹介。山田氏は「推進する人たちが、批判的に原子力の安全性を見ることが原子力の利用を進めることになる。アメリカには、安全性を批判的に見て利用を推進する立場の人がたくさんいます」と話しました。さらに「技術が高度になればなるほど科学の不確実性が伴います。みなさんが開発する技術は、皆さん自身は社会の役に立つと思って推進しても、社会からは「本当に安全なのか」といった視点で反対されることがあるかもしれません。両者が意見を出し合って、合意形成していく力が求められる時代になると思います」と伝えました。
質疑応答で学生から「原子力発電の事故から10年が経ちました。原子力発電について取材する中で、10年間で世の中の"意識"や"対応"で変化したことはありますか」と質問が挙がりました。山田氏は「良くも悪くも人間は"忘れていく"生き物です。当時の"ショック"、"どうなるかわからない不安な気持ち"が薄れてしまうことで、安全への意識が薄れてはいけません。安全を担保した中で議論を進めなければならないのに、安全が別の言葉にすり替えられてしまっています。そのことに怖さを感じます」と回答しました。また、「取材する際に心掛けていることは何ですか」との質問に対して、山田氏は「自分がその分野の専門家ではないので、取材する前にとにかく調べます。質問内容で不勉強かどうか、相手に見抜かれてしまいます。本人が執筆した論文、他社のインタビュー記事などよく調べたうえで取材に臨んでいます」と伝えました。学生たちの鋭い質問に対して、山田氏は丁寧に回答しました。
※キャリア教育共創プログラム
産学共創によるキャリア教育(人材育成)の実践策として、中部経済連合会と連携し、企業から大学の講義へ講師派遣等を行うプログラム