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2021.07.02

減塩に有効!「赤山椒」に特有の効果が明らかに 山椒の熟度によって、減塩補助効果が異なることを確認 ハウス食品との共同研究結果を7/3、4 日本栄養・食糧学会にて発表予定

【本件のポイント】

  • 赤山椒(完熟山椒)が減塩に有効であることが本学農学部とハウス食品(株)の共同研究で明らかになり、日本栄養・食糧学会(7/3、4開催)で発表予定
  • 赤山椒(完熟山椒)が減塩の課題である風味の弱化を克服。味やおいしさ、満足度を向上させる効果が明らかになった画期的な成果
  • 本研究成果はハウス食品(株)で働きながら現在も本学大学院農学研究科で学ぶ学生によるもの

【本件の概要】

 龍谷大学名誉教授 伏木亨氏(食嗜好科学研究室(2015.4~2021.3 龍谷大学農学部教授))と、当時、当該研究室に所属しハウス食品(株)に勤務する樋爪彩子氏は、共同研究(実験名:熟度が異なる山椒エキスの減塩補助効果)において、赤山椒エキスには、味の持続性をもたらし、おいしさや満足度を高める効果があり、減塩に有効であることを明らかにしました。

 本共同研究の結果は、2021年7月3日、7月4日の日本栄養・食糧学会にて発表予定です。


■減塩の課題は「味全体が弱くなること」                                

 食塩の摂り過ぎは、高血圧や胃がん等の疾病リスクを高めることが報告されています。しかし、食塩には塩味だけではなく、風味全体の強度を高める働きがあるため、減塩にすることで食事のおいしさが損なわれてしまいがちです。一方で、減塩における調理上の工夫として、香辛料の活用が経験的に知られています。中でも山椒は、塩味を強める効果があると報告されており、減塩に役立つ香辛料として期待されています。そこで、山椒の熟度に着目し、熟度が異なる青山椒(未熟山椒)と赤山椒(完熟山椒)がどのように減塩時の風味の強度を高めるかを検証し、減塩における有効性を調べました。


■共同研究について                                             

 この度、龍谷大学名誉教授 伏木亨氏(食嗜好科学研究室(2015.4~2021.3 龍谷大学農学部教授))と現在、農学研究科博士後期課程3年生 樋爪彩子氏らの共同研究において、熟度が異なる山椒エキスの減塩補助効果の検証を行いました。

 検証は、大学生(20代)9名を対象として官能評価を実施しました。青山椒/赤山椒のエキスを配合した烏龍茶を試飲後、塩分濃度が低いかつお出汁(塩分0.4%)を飲み、TI(※1)法 およびVAS(※2)法を用いて、かつお出汁について評価をしました。その後、青山椒・赤山椒のエキスについて、LCMS(※3)を用いた網羅的解析を行い、赤山椒に特徴的に多い成分をいくつか抽出し、効果を有する画分を絞り込みました。

※1 TI(Time Intensity):一つの感覚特性が時間経過に伴ってどのように変化するかを評価する手法

※2 VAS(Visual Analogue Scale):喫食者の主観的な感覚を評価する調査手法

※3 LCMS(Liquid Chromatography – Mass Spectrometry):液体中の成分を分離し、検出する機器

 

<結果①> 熟度によって効果が異なる!青山椒は先味を強くし、赤山椒は味の持続性を高める             

図1より、青山椒は赤山椒に比べて、口に含んですぐの味を強く感じ、赤山椒は青山椒に比べて、味を感じている時間が長いことがわかりました。山椒の熟度によって、味を強める効果が異なることがわかりました。

 

<結果②> 赤山椒は、味の強さだけでなく、おいしさや満足度も向上させる

図2より、赤山椒は、山椒を摂取していないときに比べて、味を強く感じているだけでなく、水っぽさを改善し、おいしさや満足度を高めることがわかりました。

 

<結果③> 赤山椒に特有の効果には、新たな成分が寄与している可能性あり                  

LCMSを用いた網羅的解析や分画物の官能評価を行った結果、赤山椒に特有の、味の持続性を高める効果には、山椒の有効成分と報告されているサンショール類以外の成分が寄与している可能性が考えられました。


  

 

 

 

■共同研究者からのコメント 

伏木 亨(ふしき とおる)氏

 

農学博士

現 甲子園大学 副学長(2021.4~)

龍谷大学名誉教授(2015.4~2021.3 龍谷大学農学部教授)


 本研究は人間が感じる塩味の強さをリアルタイムで評価できる新しい技術を用いて、未熟山椒は先味を強め、赤く完熟した山椒は味の持続性を支えているという興味深い結果を得ています。また、完熟した山椒の風味が出汁の味の濃さや満足度にまで影響を与えることを示したことは減塩による食の満足感の減弱を補完する効果につながる画期的な成果です。この作用にサンショール以外の成分も関与していることを明らかにしており、今後の研究の発展がさらに期待されます。

 

 

■研究の始まりは、山椒農家への訪問                                 

本研究は、龍谷大学と共同研究をおこなったハウス食品が山椒の産地を定期的に訪問していることに始まりました。農家の方と交流する中で、農家の人手不足や高齢化問題を目の当たりにしました。これらの問題解決に貢献するために、山椒の新たな価値を創りだすことはできないかと考え、山椒の減塩補助効果に着目したことで研究が始まりました。今後ハウス食品からは、この知見を活用した赤山椒エキス使用の製品が発売される予定です。

龍谷大学大学院農学研究科は、社会に出て働きながら学ぶ学生を積極的に受け入れています。仕事と学習の両立をサポートし、「食」と「農」の社会課題に向き合い、持続可能な社会の実現に貢献すべく取り組む人材を育成していきます。

 

問い合わせ先:龍谷大学 農学部教務課        担当:森本       Tel 077-599-5601

       ハウス食品グループ本社広報・IR部   担当:上原・中田・竹下 Tel 03-5211-1231