2022/03/29 (TUE)プレスリリース

大強度加速器×超高精度“温度計”で原子核を作る力に迫る
—風変わりな原子からのX線の測定精度を飛躍的に向上—

キーワード:研究活動

OBJECTIVE.

立教大学理学部 山田真也 准教授、一戸悠人 助教、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄)先端基礎研究センターハドロン原子核物理研究グループの研究副主幹 橋本直、学校法人中部大学(理事長:飯吉厚夫)工学部創造理工学実験教育科・ミュオン理工学研究センターの准教授 岡田信二(理化学研究所 客員研究員)らの国際共同研究グループは、大強度陽子加速器施設 J-PARC(※1)で供給される世界最高強度のK-中間子ビームと超高精度“温度計”を用いて、K中間子(※2)に働く「強い相互作用」の測定精度を飛躍的に高めることに成功しました。

発表のポイント

  • X線測定では、一般的に検出効率と分解能はトレードオフの関係にあります。その中で、世界最高精度の“温度計”を利用する「超伝導転移端型マイクロカロリメータ」は検出効率と分解能を両立するX線検出器として近年注目されています。
  • 我々はJ-PARCの大強度ビーム中という過酷な放射線環境下において「超伝導転移端型マイクロカロリメータ」を世界で初めて動作させました。そして、電子の代わりに「K-中間子」と呼ばれる負の電荷を帯びた粒子が入った風変わりな原子「K中間子原子」から放出される僅かなX線を従来と比べて10倍良い精度で測定することに成功しました。
  • 「K-中間子」には自然界にある4つの力の1つである「強い相互作用」も働き、その性質は「K中間子原子」のX線エネルギーに影響します。「強い相互作用」は、陽子や中性子を繋ぎとめて原子核を作る力で、原子力エネルギーの源でもあり、本成果はその定量的な解明へ向けた重要な基礎データとなります。
  • 本成果で実現したX線測定技術は、「強い相互作用」の研究に限らず、加速器ビーム実験・宇宙観測などのさまざまな放射線環境下におけるX線測定にもブレークスルーをもたらすと期待されます。

図1:K-中間子ビーム中にはK-中間子(図中の赤色粒子)以外の粒子(図中の黄色粒子)も多く含まれており、非常に多くの荷電粒子が飛び交い放射線強度が高くなります。本研究では、このような過酷な放射線環境下にて、K中間子原子から出てくるX線のエネルギーを、極低温で動作する超高精度温度計を利用したX線検出器によって精密に測定しました。

現代の物理学では、自然界には「重力相互作用」「電磁相互作用」「弱い相互作用」「強い相互作用」の4つの力があることが知られています。このうち「強い相互作用」はクォーク(※3)間に働き、クォークから陽子や中性子、中間子などを形成し、さらには陽子と中性子を繋ぎ止めて原子核を作る、いわば我々の身の回りの物質の起源を司る力です。

我々が着目した「K-中間子」は原子核中に入ると「強い相互作用」によって複数の陽子を強く引きつけ、通常の原子核密度を超える高密度を形成する可能性が指摘されています。そのため、地球上には存在しない高密度核物質を生成する鍵として近年注目を集めています。K-中間子に働く「強い相互作用」を詳細に調べる有力な方法の一つとして加速器施設から供給されるK-中間子を取り込んだ風変わりな原子「K中間子原子(※4)」を生成しX線のエネルギーを測定する方法があります。しかしこれまでの実験では、K-中間子ビームの強度が限られるのでX線信号を多く得られない、加速器を使用した実験では高放射線環境下になるのでX線検出器の性能が低下する、といった困難があり、測定精度は充分とは言えませんでした。

本研究では、優れたエネルギー分解能と検出効率を併せ持つX線検出器である「超伝導転移端型マイクロカロリメータ」を導入しました。この検出器は極低温技術による高感度な温度計を利用したものでX線のエネルギーを熱に変換して高精度に測定します。この検出器は外乱を受けやすいため、多数の粒子が飛び交う加速器ビームラインでの利用は難しいと考えられていました。しかし、我々はそのような放射線環境下であっても実験装置全体やデータ解析手法の最適化により性能を十分に発揮させる手法を確立しました。その結果、K中間子原子から放出されるX線のエネルギーをこれまでの10倍の精度で測定する事に成功しました。

本成果は、K-中間子に働く「強い相互作用」に関する重要な基礎データとなります。今後、同様の手法で高精度なデータを積み重ねていくことで、現在全く未知である高密度領域まで含めた「強い相互作用」の解明、そして物質の起源の解明へと繋がっていくと期待されます。また、本成果で確立した手法は、「強い相互作用」の研究での利用に限らず、ミュオン原子X線測定などの加速器ビーム実験、X線天文衛星による宇宙観測などのさまざまな放射線環境下におけるX線測定にも飛躍的な進歩をもたらすと期待されます。

本成果は、米国物理学誌『Physical Review Letters』における出版に先立ち、3月18日(米国時間)にオンライン掲載されました。

これまでの背景・経緯

身の回りの物質は原子核と電子で構成されており、原子核は核力によって陽子と中性子が結合してできたものです。この核力は、より一般的にはクォーク(※3)で構成される粒子の間に働き「強い相互作用」と呼ばれます。陽子や中性子はクォーク3個から構成されますが、クォークと反クォークから構成される「中間子(※2)」という粒子もあります。本研究ではその中で「K-中間子」に働く「強い相互作用」に着目しました。

K-中間子は、陽子や中性子には含まれない、ストレンジクォークと呼ばれる特殊なクォークを含む中間子で、これまでの研究で陽子との「強い相互作用」が非常に強い引力であることが分かっています。これは原子核が潰れてしまわないように陽子や中性子同士の「強い相互作用」が近距離で斥力であることと対照的で、原子核にK-中間子を入れると陽子を引き寄せて通常原子核よりも高い密度を形成することが期待されます。実際、K-中間子と2つの陽子が「強い相互作用」で結合したK中間子束縛原子核(※5)の存在が報告されています。通常、陽子2つのみでは束縛状態を作ることはできないのですが、K-中間子を入れることで束縛する非常に興味深い新しいタイプの原子核だと考えられています。このような原子核を理解するためにもK-中間子に働く「強い相互作用」を詳細に測定することの重要性は急速に高まっています。

図2:K中間子原子の模式図。通常の原子は、正電荷の原子核と負電荷の電子が「電磁相互作用」によって束縛された系ですが(左図)、K中間子原子は、電子の代わりにK-中間子が束縛された系で、原子核との間には「電磁相互作用」に加えて「強い相互作用」が働きます(右図)。K-中間子は、電子と比べて1000倍重いため、1000倍原子核に接近し、この近距離において「強い相互作用」が働きます。

K-中間子に働く「強い相互作用」の強さを測定する手法として、電子の代わりにK-中間子が束縛された風変わりな原子「K中間子原子」を生成し、その原子からのX線のエネルギーを測定する方法があります。K中間子原子とは、図2のように、通常の原子の1つの電子を、負電荷をもったK-中間子で置き換えた原子です。通常の原子とは異なり、負電荷を持つK-中間子と正電荷を持つ原子核の間には、電気的な力だけではなく「強い相互作用」も働きます。この「強い相互作用」によって軌道エネルギーは変化し、それに従って放出されるX線のエネルギーも変化します。そこで、高精度な計算が可能である電気的な力のみによる場合と、実験で測定するX線エネルギーを比較することで、「強い相互作用」の情報を引き出すことができます。
K中間子原子は加速器で生成されたK-中間子ビームを標的物質中に止めることで生成します。しかしK-中間子を作るためには多くのエネルギーが必要であり、かつ寿命が短くすぐに崩壊してしまうため、得られるビームの強度が限られます。このため、生成できるK中間子原子の数はあまり多くありません。さらにX線はK中間子原子から四方八方に放出されるため大きな検出面積をもつ検出器を使用する必要があります。従来の実験では「半導体検出器」が採用されてきました。しかし近年の理論的研究の発展もあって、より優れた分解能をもつ検出器による飛躍的に精度を高めた測定の需要が高まってきました。優れたエネルギー分解能をもつX線検出器としては「結晶分光器」がよく使われます。しかし検出効率が非常に小さいため十分な数のX線を検出することが難しく、我々の実験には適していません。

今回の成果

日本原子力研究開発機構、中部大学、理化学研究所、立教大学、東京都立大学、東北大学、大阪大学核物理研究センター、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、J-PARCセンターなどからなる国際共同実験J-PARC E62実験グループ(20機関、70名)は、優れたエネルギー分解能と検出効率を併せ持つ革新的X線検出器「多素子超伝導転移端センサー型マイクロカロリメータ」を、大強度K-中間子ビーム中で動作させました。そうすることで、K中間子原子から放出されるX線のエネルギーを、これまでの10倍の精度で測定する事に成功しました。

超伝導転移端センサー(Transition Edge Sensor; TES)は、特定の物質を非常に低い温度に冷却していくと電気抵抗がある温度で急激にゼロになる「超伝導」とよばれる現象を利用しています。超伝導へ転移する直前のごく狭い温度領域は、温度変化に対して電気抵抗が急激に変化するため非常に感度の高い温度計として機能します。この高精度温度計でX線エネルギーを測定するためにはまず、吸収体と呼ばれる物質でX線を反応させてエネルギーを熱に変換します。その結果生じる微少な温度上昇をこのTES温度計で測定することで、X線のエネルギーを高精度に測定することができるのです(図3左)。このような検出器を「TES型マイクロカロリーメータ」(以下、「TES検出器」と呼ぶ。)と呼びます。TES検出器は、同様に優れたエネルギー分解能をもつ結晶分光器と比べ、多素子化により有効面積を拡大できる点と、広いエネルギー範囲をカバーできる点で優れています。

図3:左の図は、TES検出器の原理を示しています。入射X線エネルギーにより吸収体に生じた僅かな温度上昇を、TES温度計における急激な抵抗増加として高精度に測定します。右の写真は、本実験に使用したTES検出器です。共同研究先のアメリカ国立標準技術研究所(NIST)が製作した240素子のもので0.1K程度まで冷却して使用します。

実験は、世界最高強度のK-中間子ビームを得ることのできる、茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARCのハドロン実験施設にて実施しました。K-中間子ビームを液体ヘリウム標的に照射し、そこから放出されるX線を、多素子のTES検出器(図3右)により測定しました。TES検出器の1素子はおよそ0.1mm2と非常に小さく、X線検出効率は典型的な「結晶分光器」と同程度です。本研究ではアメリカ国立標準技術研究所(NIST)が製作した240素子の検出器を使用することにより、「結晶分光器」より100倍以上の検出効率を実現しました。これにより、1時間に1事象程度のK中間子原子X線を検出できることが期待されるため、優れた分解能での実験を現実的に行うことが可能となりました。

一方、大強度K-中間子ビームを使用した実験では非常に多くの荷電粒子が飛び交い放射線強度が高くなるため、過酷な放射線環境の下で検出器を動作させなければなりません。TES検出器は、実験室では優れたエネルギー分解能を持ちますが、外乱を受けやすいため、放射線環境下でも性能を維持できるか分かっていませんでした。本研究では、まず、荷電粒子のTES検出器への直撃を極力軽減するため、目的のX線を遮らず、加速器からの不要な荷電粒子を効果的に遮るセットアップを構築しました。さらに、隣接する素子の情報を利用した解析や、X線信号波形の詳細な解析をすることで、荷電粒子に由来するノイズを大幅に低減する手法を確立しました。その結果、過酷な放射線環境下であってもTES検出器が本来持っている優れたエネルギー分解能を実現しました。

図4: 本研究で測定したK中間子ヘリウム4原子からのX線(3d→2p遷移)のエネルギースペクトル。赤色はTES検出器、青色は従来型の半導体検出器で測定したスペクトルに対応します。TES検出器を用いることで、圧倒的な分解能が得られました。このX線は本来TES検出器で観測されたピークよりも細いエネルギー分布を持っています。一方、半導体検出器では検出器の性能によりピークが広がり“ぼやけて”観測されています。半導体検出器では分離できなかった混入物(鉄の蛍光X線)もTES検出器では別のピークとして測定できることも分かります。

実験のデータ収集期間は約1ヶ月に及びました。そのうちヘリウム4を標的として測定したK中間子原子X線のエネルギースペクトルを図4に示します。赤線はTES検出器を用いて測定した結果です。青線は従来型の半導体検出器を用いて同時に測定したスペクトルです。エネルギー分解能の差は歴然で、このK中間子原子X線がもつ本来の自然幅(数eV)に迫る分解能を実現しました。この細いピークを用いて、K中間子ヘリウム原子X線のエネルギーの中心値を、これまでの10倍の精度で決定することに成功しました。

今後の展望

本研究により、K-中間子とヘリウム原子核間の「強い相互作用」に関して、これまでにない高精度な情報を得ました。今後、様々な原子に対して同様の手法による系統的な測定を進めることで、「強い相互作用」の定量的理解が飛躍的に進展すると期待されます。一般にクォークで構成される粒子を「ハドロン」と総称しますが、負の電荷をもつハドロンと原子核の「強い相互作用」は、中性子星(※6)の構造を考える上でも重要な役割を果たすことが指摘されています。中性子星は巨大な “原子核” とも言われ、中心部では超高密度が実現していると考えられます。しかしその超高密度物質の性質はわかっておらず、近年は特に、ストレンジクォークを含んだ負電荷ハドロンの役割が議論の主役となっています。今後、本研究で確立した手法を用い、K-中間子のみならず、シグマ粒子(Σ-)や、グザイ粒子(Ξ-)が束縛した原子からのX線を測定することを目指します。近年発見されたK中間子束縛原子核の研究と併せ、中性子星内部の理解につながる「強い相互作用」の研究の発展が期待されます。

本研究は、TES検出器の技術開発で世界をリードしているアメリカ国立標準技術研究所(NIST)との国際コラボレーションで、原子核・ハドロン物理分野だけでなく、原子・分子物理分野や、X線天文衛星への搭載に向けTES検出器開発に携わっている宇宙物理分野の研究者との分野横断チームで実施しました。本成果は、多くの荷電粒子が飛び交う過酷な放射線環境下で展開する高精度X線観測実験の重要なマイルストーンとなりました。

本チームは、この実験を契機に、ミュオン原子X線測定による基礎物理法則の検証や放射光施設でのX線吸収端測定による地球・環境科学の研究など、TES検出器を用いた様々な量子ビーム実験に着手しています。現在、我々は、より幅広い分野のX線分光実験を実現するため、より広範囲のエネルギーのX線に対応したTES検出器開発も進めています。

論文情報

  • 雑誌名:Physical Review Letters
  • タイトル:Measurements of Strong-Interaction Effects in Kaonic-Helium Isotopes at Sub-Electron Volt Precision with X-Ray Microcalorimeters
  • 著者名:T. Hashimoto, S. Aikawa, T. Akaishi, H. Asano, M. Bazzi, D. A. Bennett, M. Berger, D. Bosnar, A. D. Butt, C. Curceanu, W. B. Doriese, M. S. Durkin, Y. Ezoe, J. W. Fowler, H. Fujioka, J. D. Gard, C. Guaraldo, F. P. Gustafsson, C. Han, R. Hayakawa, R. S. Hayano, T. Hayashi, J. P. Hays-Wehle, G. C. Hilton, T. Hiraiwa, M. Hiromoto, Y. Ichinohe, M. Iio, Y. Iizawa, M. Iliescu, S. Ishimoto, Y. Ishisaki, K. Itahashi, M. Iwasaki, Y. Ma, T. Murakami, R. Nagatomi, T. Nishi, H. Noda, H. Noumi, K. Nunomura, G. C. O’Neil, T. Ohashi, H. Ohnishi, S. Okada, H. Outa, K. Piscicchia, C. D. Reintsema, Y. Sada, F. Sakuma, M. Sato, D. R. Schmidt, A. Scordo, M. Sekimoto, H. Shi, K. Shirotori, D. Sirghi, F. Sirghi, K. Suzuki, D. S. Swetz, A. Takamine, K. Tanida, H. Tatsuno, C. Trippl, J. Uhlig, J. N. Ullom, S. Yamada, T. Yamaga, T. Yamazaki, J. Zmeskal
  • DOI:10.1103/PhysRevLett.128.112503

各機関の役割

本研究は日本原子力研究開発機構(JAEA)、中部大学、理化学研究所、立教大学、東京都立大学、大阪大学核物理研究センター、東北大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、東京大学、東京工業大学、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)、オーストリアSMI研究所、イタリア国立核物理学研究所、ミラノ工科大学、ザグレブ大学、ルンド大学が参加する国際共同研究グループにより行われました。これらの機関は実験遂行に向けた検出器開発や実験の実施に貢献しました。特にJAEAおよび中部大学は研究全体を総括し主導しました。立教大学・東京都立大学・NISTはTES検出器技術の開発、KEKは液体ヘリウム標的開発、理化学研究所・大阪大学核物理研究センター・東北大学はK-中間子ビーム検出器の運用で中心的な役割を果たしました。

共同研究グループ(各機関代表研究者)

日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター 研究副主幹 橋本直
中部大学工学部 准教授 岡田信二
立教大学理学部 准教授 山田真也
東京都立大学大学院理学研究科 准教授 石崎欣尚
理化学研究所開拓研究本部 専任研究員 佐久間史典
大阪大学核物理研究センター 教授 野海博之
東北大学電子光理学研究センター 教授 大西宏明
高エネルギー加速器研究機構加速器研究施設 研究機関講師 佐藤将春

助成金の情報

本研究の一部は、以下の研究助成を受けて行われました。
  • 日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金(24105003、25105514、26707014、26220703、15H05438、15H00785、16H02190、16H17718、17J07791、18H01237、18H05402、18H05458、20K14524、20K20527)
  • 三菱財団自然科学助成(Grant No. 26145)
  • 文部科学省 卓越研究員事業
  • 理化学研究所 研究奨励ファンド
  • EU STRONG-2020 project (Grant No. 824093)
  • HRZZ project 8570.

用語の説明

  • ※1 大強度陽子加速器施設 J-PARC
    茨城県東海村にある大強度陽子加速器と利用施設群の総称。世界最高レベルの強度の陽子ビームで生成する様々な二次粒子ビームを利用して、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの最先端学術研究及び産業利用が行われている。その中のハドロン実験施設では、高エネルギー陽子ビームを金の標的に当ててK中間子やπ中間子などの二次粒子ビームを生成し、素粒子や原子核ハドロンの実験的研究が行われている。J-PARCはJapan Proton Accelerator Research Complexの略。

  • ※2 中間子、K-中間子
    クォークと反クォークが、強い相互作用で結びついた状態が「中間子」である。4種類あるK中間子のうち負電荷の「K-中間子」は、ストレンジクォークと反アップクォークで構成される。

  • ※3 クォーク・反クォーク
    クォークは、物質を構成する最小単位「素粒子」のひとつで、六種類存在し、三つの世代を形成する。安定に存在するのは質量の最も軽い第一世代のアップとダウン、次に第二世代のチャームとストレンジ、第三世代のトップとボトムと続く。これら全てのクォークについて、対応する反粒子(電荷などの正負の属性が逆の粒子)も存在し、これを反クォークと呼ぶ。

  • ※4 K中間子原子
    通常の原子は、原子核の周りを電子が回っているが、電子の代わりに負電荷のK-中間子が回っている原子。K-中間子と原子核は通常の原子と同様に電気的な力で束縛しているが、それに加えてK-中間子と原子核の間に「強い相互作用」が働く。

  • ※5 K中間子束縛原子核
    K中間子と原子核が「強い相互作用」によって結合した状態でその存在が理論的に予測されている。近年、K-中間子と2つの陽子が結合したK中間子束縛原子核「K-pp」の観測が報告された。「K中間子束縛原子核」では、K中間子が原子核の内側に入り込んでおり、生成されても原子核との反応によりすぐに崩壊してしまう。

  • ※6 中性子星
    「中性子星」は、超新星爆発によって生まれる中性子を主成分とする超高密度の星で、星の最終形態の一つ。半径は約10km強、質量は太陽の1~2倍で、密度は1cm3あたり10億トンに達する。宇宙空間に浮かぶ“巨大な原子核”とも呼ばれており、その中心部には通常の原子核密度を超えた高密度核物質ができていると考えられている。

お使いのブラウザ「Internet Explorer」は閲覧推奨環境ではありません。
ウェブサイトが正しく表示されない、動作しない等の現象が起こる場合がありますのであらかじめご了承ください。
ChromeまたはEdgeブラウザのご利用をおすすめいたします。