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2022.06.15

“Culture of Integrity”プログラム第2弾を実施しました

 6月3日(金)、ウクライナ・キーウ在住の防衛問題に詳しいOleksandr Karpenko氏をゲストスピーカーに迎え、本学法学部国際関係法学科の学生とQ & Aセッションを行いました。

  本プログラムは同学科の高柴優貴子教授の主催する企画で、国際社会の最前線で活躍するゲストをお招きし、参加者が事前にテーマの背景や相手の置かれた立場を立体的に調査・理解した上で英語による質問を準備して対話に臨む試みで、現場ならではの視点を引き出し、国際社会とつながる実感を育てていくことを目的にしています。今回は折しも開始から100日経ったロシアによるウクライナ侵攻で、戦場に置かれた人と直接コミュニケーションを図る経験を通じて、ニュースの断片としてではなく、当事者の観点に立って関心を持ち続けるきっかけにしたいと計画されました。

  セッション冒頭、Karpenko氏によりウクライナ・ロシア両国関係の歴史、特に民族意識や社会が重きを置く価値観の違いや、ソ連に組み込まれていたウクライナが1991年に独立して以降、ロシアの介入の度に抵抗してきた歴史が説き起され、侵略や組織的かつ大規模な戦争犯罪の背景や意図について理解が深まりました。

  その後のQ&Aでは、キーウ周辺の市民生活の現状や、ウクライナ人の士気の高さやその原動力といった現在の状況の把握に加え、両国関係史、中でも独立以降のウクライナにおける教育内容の変化や、ウクライナのNATO加盟問題等のロシアのナラティヴが侵略の根底にある問題の本質と乖離していること、そして今後に向けて戦争犯罪の訴追・処罰が果たす役割等について伺い、戦禍の中にいる方からの一言一言考え抜かれた言葉に参加者は熱心に耳を傾けていました。

  最後にKarpenko氏より大学生活へのアドバイスとして、「権威主義体制は必ずや他国の人々に武力で意思を押し付けてくる。最初は小さな違法行為かもしれないが、止めなければ次第に取り返しのつかない大きな攻撃になるだろう。皆さんが学ぶ国際法の知識が、今後、世界をルールに基づく社会へと立て直す(rebuild)中で必ずや多くの需要があることを忘れずに大いに学んで行ってもらいたい」と語りかけられ、先の見えない戦争を戦いながらも戦後を見据え、遠く離れた日本で学ぶ学生に対し、共に明日を創ろうと呼びかける氏の姿勢は参加者に深い印象を残しました。

  今回の参加者は春に入学したばかりの1年生が中心でしたが、この2ヶ月間、高校英語を脱却してウクライナ情勢の理解に必須となる背景知識を直接英語で取得することを目指し、ドキュメンタリーの視聴等でインプットを補足しながら、ゼミ生の協力を得つつ、常に「誰の観点から見た主張であるのか」を的確に判断しながら情報に接する実践をしてきました。本セッションを通じて、ウクライナ情勢に関する理解の解像度が上がるだけでなく、最大限理解している背景知識を全て用い、ナラティヴを読み解いた上で当事者の人々の立場を考慮した問いかけをすることで、様々な状況にある人々と信頼関係を結ぶ入り口に立てることを学びました。