【産学連携】学生がリノベーションを考案!団地に人がつながるコミュニティスペース「ぷらっとあさひ」完成

2022.10.06

【産学連携】学生がリノベーションを考案!団地に人が
つながるコミュニティスペース「ぷらっとあさひ」完成

日本総合住生活株式会社との団地のコミュニティ活性化に寄与する空間に関する共同研究

2022年9月10日(土)、東京都清瀬市にある清瀬旭が丘団地の一画に、本学住居学科および大学院の住居学専攻の学生がリノベーションに携わったコミュニティスペース「ぷらっとあさひ」が完成し、運用がスタートしました。今回のリノベーションは、本学と日本総合住生活株式会社(JS)が産学連携で進めている、団地のコミュニティ活性化に寄与する空間に関する共同研究の一環となります。

学生が住民の方とのコミュニケーションを深め、課題や要望を設計に反映

もともとは2019年にJSが主催したリノベーションコンペにおいて、日本女子大学大学院 家政学研究科 住居学専攻 篠原研究室の学生たちが最優秀賞を受賞したことからスタートしました。当初は住戸の予定が、「団地に浮遊するエレメント 〜『知』と『恕』の交換によるコミュニティの広がり〜」というコンセプトから、共用空間に変更となり、3ヵ年計画で取り組んでいます。発案や企画段階に携わっていた学生が卒業していくことで、徐々に下級生に引き継がれていき、今年度は、篠原研究室の修士課程1年2名、修士課程2年1名、博士課程(後期)3年1名が本取り組みを担当して完成に至りました。

学生たちは設計前に住民の方へのアンケートを行い、共用部の活用度合いや住民の方同士の交流を望む方の割合、あったらいいと思う機能など、団地におけるコミュニケーションの課題や要望を調査しました。その結果を踏まえて、学生が「ぷらっとあさひ」の基本設計を担当し、JSや設計事務所との実施設計の打合せを重ねました。その間には、アンケート結果の報告会やコンセプトの発表会など、何度も住民の方に趣旨や内容を説明し、意見交換のできる機会を設けて、住民の方の理解を得るための活動も行ってきました。そしてついに2022年4月に着工し、7月に竣工しました。8月のプレオープンでは地域の方が自由に見学できる期間をつくり、このたび正式に運用開始となりました。9月10日、学生が主体となり現地でこけら落としのイベントを行いました。

(写真左)ぷらっとあさひ外観
(写真右)正面ウィンドウの周辺マップに地域の方のおすすめスポットを書き込む
(写真)ペイントワークショップの様子

イベントを運営するプロジェクトメンバーに話をうかがいました。

理想と現実のギャップを知った経験を仕事にも生かしたい

住居学専攻2年(家政学部住居学科居住環境デザイン専攻卒業)谷 萌水さん

— こけら落としイベントはペイントワークショップを行いました。開催の目的は何でしょうか。

今日のイベントは正式オープンという区切りの位置付けです。これまで足を運んでくださる方は高齢者の方が多かったので、どの世代でも楽しんでいただけるペイントワークショップという内容にしました。また、ここで使う椅子に自らペイントすることで、自分が関わったモノがある場所として「ぷらっとあさひ」に愛着を持ってもらえたらいいなと思って企画しました。

— 地域の方々とのコミュニケーションを図る中で、どのような気づきがありましたか。

理想と現実は違うと感じました。こうなったらいいなと思っても、そうならないことばかりでした。特に「ぷらっとあさひ」に主体的に関わってくださる方を探すのが非常に難しいと思いました。ひとつのコミュニティをどのように運用していけばいいのかを体験することは、これまで学んできた建築の中ではありませんでした。ここは住民の方や地域の方々が主催していただきたい場所なのですが、私たちが催す場所と思われてしまい、ここだから何かをやってみたいと思っていただくにはまだ時間がかかりそうです。
でも、想像以上に何かをやってみたいとおっしゃる方は多かったです。ひとりでは怖い、勇気が出ないという方がほとんどなので、背中を押してあげること、引っ張ってあげることが私たちの役目だと思っています。

— 「ぷらっとあさひ」は地域の中でどのような存在になってほしいと思いますか。

誰かのやってみたいができる場所になってほしいと思います。見てほしい、集まってみたいなど、みなさんが心の中で思っている、やってみたいことができる場所であることの認知が広がればいいなと思います。

— 谷さんは基本設計以外にも「ぷらっとあさひ」の命名とロゴデザインも手掛けられたそうですね。名前に込めた意味を教えていただけますか。

モノや空間を通してさまざまな人がつながる「プラットホーム」であり、誰もがいつでも気軽に「ぷらっと立ち寄れる空間」の「ぷらっと」を掛け合わせています。ぷらっと立ち寄る場所が、誰かのやってみたいができる場所になるといいなという願いを込めています。ロゴのポイントは、「ぷ」の文字を人に見立てていて「ぷらっとさん」と呼んでいます。ぷらっとさんがこの施設に入ってくるところをイメージして作りました。

— たしかに「ぷ」になっていますね。かわいいです!
卒業後は設計の仕事に就かれるそうですが、今回の経験が今後どのように生かせると思いますか。また、本学で学ぶ魅力はどのようなことだと思いますか。

このプロジェクトで得たユーザーの声や理想と現実のギャップは、就職してから大いに役立つと思います。ユーザー視点に立つことは設計側からも非常に大切だからです。日本女子大学で学んできて一番感じるのは、おのずとリーダーシップが育てられることですね。学生数が少ないので自然と自分がやらないと!というのが刷り込まれています。

住民の方には分かりやすく簡潔に伝えることが大切

人間生活学研究科生活環境学専攻3年(家政学部住居学科卒業)竹内 光子さん

— 竹内さんはJSのリノベーションコンペが始まった2014年当時は、本学住居学科の学術研究員だったそうですね。これまで6回行われてきたコンペを見てきて、年々感じられる学生の成長はどんなところですか。

目に見えるところだと、プレゼンスキルはとても上がったと思います。また、回を重ねるに連れて、出題する側の志向が住戸単体から団地全体にまで広がり、学生からもコミュニティに関する提案がされるようになりました。学生たちには、住戸や既存のコミュニティ・入居者像に止まらない柔軟な発想が求められていると思います。

— ついに本日こけら落としを迎えましたね。これまでの一番の苦労は何でしたか。

住民の方にどのようにこの場所を認識してもらうか伝え方が難しく、今でも試行錯誤中です。このように物理的に形となり、使用ルールも決まったことで、今までよりは説明しやすくなりました。これまでは形のないものを説明していたので、とても苦労しました。特に気づきがあったのは、分かりやすい言葉で簡潔に伝えることが重要であるということです。「コミュニティスペース」と伝えても「それってなに?」となります。「休憩できる場所です」と伝えると「そうなのね」と理解してもらえました。プレオープン期間に、きちんと理解してもらえなかったことに改めて気づき、今もこれからもその差を埋める作業が続くと思っています。

— 確かに誰でも分かる言葉で伝えるのが大切ですね。
竹内さんは現在博士課程ですが、大学を選ぶ際に日本女子大学を選んだ理由を教えてください。

もともと住宅が作りたかったので、ストレートに住居学科のある日本女子大学を選びました。私は小さい頃に、社宅やマンションに住んでいました。集合住宅って、外から見るとドアがずらっと並んでいて、それぞれのドアを開けると全く別世界が広がっていますよね。そのことを不思議に感じたりして、家族が幸せに暮らせる家ってどんなものだろうとずっと考えていました。
日本女子大学は、学生数の割に先生が多く、先生との距離感も近いので、手厚くサポートを受けながら勉強ができました。これは学部の頃から大学院まで同様です。

— ちなみに女子大で学ぶ良さはどんなことだと思いますか。

女性だけの環境は、「女性だから」ということをそもそも考える必要がないので、何でも自分でできるように、たくましくなりますよ。あとは、メラメラとした競争心よりも、人のいいところを認め合って、お互いに成長していくようなところがあったかな、と思います。他大学とのコラボレーションや、このような産学共同のプロジェクトに取り組むと、それまでに培ったたくましさが発揮されているように思うことがよくあります。

写真左)プロジェクトを振り返る竹内さん(左)と谷さん(右)
写真右)竹内さんと谷さんも記念に椅子にペイント

イベントでは約100名の方が来場してくださいました。家族でペイントしたり、子どもたちが縁日でなげわや釣りをしたり、実際の使用のために下見や相談に来られたりと、思い思いの体験をされました。

ぷらっとあさひでは完成前から学生たちが地域の方々と積極的に関わり、話をじっくり聞く姿がありました。この場所が学生たちが込めた願いの通り、地域の方々のやりたいことが叶う場所に発展していくことを期待しています。
ぷらっとあさひのホームページと予約フォームも完成しています。ぜひご覧ください。