取組概要
人工衛星で観測した画像情報と携帯電話・スマートフォンなどを使ってソーシャルメディア(SNS)で発信される情報を組み合わせて、災害時の被害状況や復興状況の把握に役立てる。
世界トップレベルの画像解析技術を持つ情報技術センターと、SNSの災害時利活用を研究する学部横断型研究グループが融合した本学ならではの取り組みである。人工衛星から送られる画像からさまざまな情報を抽出するリモートセンシング技術を使い、情報技術センターでグローバルな視点から被災地の状況を発信するとともに、災害時に多くの人が活用する短文投稿サイト「Twitter」を活用した災害情報共有アプリ「DITS・DIMS」を開発普及させることでローカルな情報を収集発信できる体制を整え、被害状況の総合的な把握や被害の軽減、効果的な復興計画の立案などに役立てるシステムを開発する。
成果
災害発生前後に撮影した衛星画像を比較して被害地域の被災状況を特定する技術の開発が着実に進んでおり、現在では本学で受信した衛星画像は受信後数時間で指定した地域の画像を公開できるようになっている。こうした衛星画像は国土地理院や海上保安庁へも随時提供しており、「広域な環境状況の迅速な把握に極めて有効だ」といった声が寄せられている。一方、災害情報共有アプリ「DITS・DIMS」については、神奈川県平塚市などの自治体と協力した住民参加型の実証実験を行っているほか、中高生の防災教育にも活用されている。実験の参加者からは、「いつも使っているSNSなので、不自由なく使えるのがよい」「現地でしかわからない現状の発信には最適な方法だと感じた」との声が寄せられるなど、システムとしての有用性が証明されている。またこれらの活動はメディアでも広く発信されており、各地の自治体から協力要請が寄せられている。本プロジェクトに対しては、海外からも高い注目が寄せられており、自然災害の激甚化や気候変動による影響が深刻化する中、この技術に対するニーズが高まっている。フィリピン大学や中国科学院との間では、国際共同研究が進んでいるだけでなく、定期的な国際ワークショップも開催している。また、フィリピンでは災害情報共有アプリの実証実験も行った。
今後は、国内の自治体や海外の研究機関などとの連携をさらに強化し、地球温暖化にともなう地球環境のモニタリングなどにも活用していくとともに、災害情報共有アプリの改良や普及を進めていく。また、「日常生活で使われないシステムは災害時にも使われない」との観点から、誰もが日常的に気軽に使える災害時・平常時共用の情報共有システムを構築し、安心安全な社会の実現に貢献する。
※この取組は、提言・事例集『私立大学理工系分野の研究基盤の強化と向上-科学技術イノベーションの推進に向けて-』で紹介した研究事例です。
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