取組概要
金や銀などの貴金属原子が集まった分子は金属クラスターと呼ばれており、発光したり磁石になったりと通常の貴金属とは異なる性質を持っている。このような性質のため、金属クラスターは医療やエレクトロニクスなど様々な応用が期待されている。本研究ではこのような貴金属クラスターの表面を保護している保護分子がどのような状態に存在するのか、またその状態が金属クラスターの発光現象にどのような影響を与えるのかを明らかにした。
銀原子が集まった銀クラスターの表面にはクラスターを保護するための保護分子が取り巻いている(図1)。これまで、そのような保護分子はクラスターの表面から外れることはなく安定に存在していると考えられてきた。しかし、銀クラスターの発光現象に関する実験を行った結果、この保護分子は銀クラスター表面で着いたり離れたりしていることが分かった(図2)。実験で得られたデータの詳細な解析を行った結果、銀クラスターは残った保護分子の数によって発光の性質が大きく変わってしまうことが明らかになった。
成果
現在でも世界各国の研究チームにより金属クラスターの発光現象についての研究が行われているが、どの研究チームも保護分子は表面に安定に存在するものだと考えている。しかし、私たちの研究成果により、表面の保護分子は着いたり離れたりしており随時その構造が変化してしまっているという新しい描写が得られた。
金属クラスター表面の保護分子の状態は、クラスターの発光現象に大きな影響を与える。そのため、どのような保護分子であればより明るく光るクラスターが作れるのかといった材料開発のための設計指針の提示が今後可能になると期待される。
※この取組は、提言・事例集『私立大学理工系分野の研究基盤の強化と向上-科学技術イノベーションの推進に向けて-』で紹介した研究事例です。
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