取組概要
慶應義塾大学大学院理工学研究科大学院生の久保田弾、徳岡雄大(共に研究当時)と同大学理工学部の舟橋啓教授、山田貴大専任講師らのグループは、高校生で習う積分の数学的な処理が、近年発展の著しいAIによる言語翻訳などの変換と類似することに注目し、積分される関数(被積分関数)を入力すると積分された関数(原始関数)を予測することができるAIを開発しました。また、同グループはAIが出した原始関数を微分して被積分関数と一致するかを判定することで積分の正誤判定が可能であることに着想を得て、様々なAIを構築、学習させて正解が出せたものを採択する方法を編み出しました。
成果
この結果、実装したAIは99.79%の精度で積分が可能であることが示され、これまでに開発された積分ツールであるMathematicaや機械学習に基づく方法と比較して最高精度を達成しました。さらにAIが学習した数式の特徴を調べることで、構築したAI毎に積分をすることが得意な関数や不得意な関数があることが明らかになり、相互補助的に積分に解答することでAIは高精度を達成できたことが明らかにされました。積分は制御工学やシステム生物学におけるシミュレーションに必須の処理であり、今回の成果はこうした分野における、より正確なシミュレーションに貢献することが期待されます。
本研究成果は学術雑誌IEEE Accessへの掲載に先立ち、同誌Webサイトにてオンライン速報版が4月29日に公開されました。