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東京都

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取組内容

研究

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東邦大学

多様な虫の鳴き声がリラックス効果をもたらすことを確認

2022年7月1日

取組概要

東邦大学と千葉工業大学、国立研究開発法人国立環境研究所、日本工営株式会社による研究チームは、虫の鳴き声が人にリラックス効果をもたらす研究成果を発表しました。複数の被験者に異なる種類の虫の鳴き声を組み合わせた音源を聞かせその印象を評価する実験を行った結果、鳴く虫の種数が増えると好ましいイメージが向上することが確認されました。

成果

近年、自然の中に身を置くことが人の心身に良い影響を与えることが様々な研究で分かってきましたが、景観のような視覚情報と比べて、自然界の音によりもたらされる聴覚情報が人にどう影響するかを検証する研究は多くありませんでした。日本では古来より虫の鳴き声を楽しむ文化があり、身近な虫の鳴き声が人の心理に好影響を及ぼすのではないかと仮説を立て、4者合同で検証することとしました。

昆虫の種類が豊かな千葉県白井市の草原で、実験に用いるバッタの仲間4種(エンマコオロギ、カンタン、キンヒバリ、スズムシ)を選定しました。虫4種の鳴き声の音源を組み合わせた全15通りのサンプルを用意し、実験室で大学生被験者65名にランダムで7通りずつ聞かせ、心理学における測定法の一つであるセマンティック・ディファレンシャル法(SD法)により各音源に対する印象を回答してもらいました。得られた結果をもとに、因子分析や音響物理解析などの分析手法を用いて、種や種数によって鳴き声に対する好みの程度に違いがあるかどうかを検証しました。
聞かせる虫の声が1種類のみで、それぞれの鳴き声の好みを尋ねる質問では有意な差はありませんでしたが、種数を組み合わせると、数が増えるにしたがって、好みの得点が向上する結果となりました。さらに因子分析を行ったところ、4つの因子(Calm:穏やかさ、Gorgeous:華やかさ、Musicality:音楽性、Deep:深み)が抽出され、種数が増えるに従って各因子に対する印象の得点が向上しました。特に、「華やかさ」と「音楽性」の得点が顕著に増えました。

実験に用いた4種の鳴く虫の音響スペクトルを分析したところ、種ごとに周波数の特徴が異なっており、聴感上の調和が得られたと考えられました。また、音の高さ、強さ、長さなどのパターンが種によって異なることから、複数の種の音が調和することで、リズムも多様化し、より好ましい印象を与えたと考えられます。一般的に、自然の音には様々なリラックス効果があると言われていますが、虫の鳴き声にも同様の心理的な回復効果があると示唆されます。
なお、今回は大学生という比較的均質な属性の集団を対象とした実験であったため、文化や年齢などの違いが結果に及ぼす影響についての分析は今後の課題です。

関連リンク

https://www.toho-u.ac.jp/press/2022_index/20220617-1215.html