取組概要
越水静助教・矢野健太郎教授、基礎生物学研究所 南野尚紀特任助教・海老根一生助教・上田貴志教授、金沢大学 西山智明助教、立教大学 養老瑛美子助教・榊原恵子准教授、理化学研究所 佐藤繭子技師・若崎眞由美テクニカルスタッフ・豊岡公徳上級技師ら共同研究チームはこのたび、オミクス解析によるスクリーニングから、ゼニゴケにおいて精子形成に関与する新規因子BLD10を発見しました。さらに、BLD10遺伝子の精子形成における機能は、BLD10遺伝子が分子進化した結果、祖先機能に加えて新たに獲得した機能である可能性を示しました。
本研究成果は、英国の国際雑誌「New Phytologist」2022年8月3日付(日本時間8月4日付)に掲載されました(オンライン版が2022年7月16日に先行公開されました)。
成果
本研究では、オミクスデータを活用し、それらを統合解析することで、効果的に目的遺伝子をスクリーニングしました。機能解析については、遺伝子導入系が確立されており、精子を形成するゼニゴケとヒメツリガネゴケを使用すること、および高い観察技術によって可能となりました。特に連続切片自動撮像システムを搭載した電子顕微鏡を用いて連続切片観察を行うことで、基底小体周辺の構造の詳細な解析に成功しました。
ゼニゴケのBLD10遺伝子は精子形成において機能することが明らかになりましたが、その作動機序はまだ不明であり、今後の解明が待たれます。また、BLD10遺伝子は陸上植物において進化速度が上昇しており、他の陸上植物においても何らかの機能進化が起きている可能性があるため、今後の解析が期待されます。
本研究で行ったスクリーニングにより、BLD10遺伝子の他にも精子形成に関連する候補因子を選抜済みです。それら因子の機能解析によって、さらなる精子形成関連因子を同定できる可能性があります。