取組概要
教育学部幼児教育学科今福 理博准教授と学部生の赤塚 愛梨さん※1は、小学1~6年生を対象に(1)やり抜く力※2(粘り強さ)が高い児童ほど、自尊感情※3や学校・生活満足度が高くなること、(2)やり抜く力と学校・生活満足度の関係に自尊感情が媒介していることを解明しました。本研究結果は、やり抜く力が高い児童は学校・生活満足度が高く、その関係に自尊感情の高さが関与する可能性を示しています。
※1 2020年研究当時 教育学科保育・幼児教育専修(現 幼児教育学科)4年生、2020年度卒業
※2 やり抜く力:長期的な目標に対する粘り強さや情熱。主に努力の粘り強さと興味の一貫性
※3 自尊感情:自分に対する肯定的な態度
成果
教育分野では、やり抜く力や粘り強さなどの特性が注目されています。やり抜く力の高さは、教育のアウトカム(学習に対する態度、学業成績、生活満足度など)の良好さと関係するとされています。また成人では、やり抜く力が自尊感情を媒介して生活満足度と関連することが分かっています。しかし、小学生において、この関係性については明らかになっていませんでした。
本研究では、小学1~6年生107名とその保護者を対象に「日本語版Short Grit (Grit-S)尺度」、「日本語版Rosenberg自尊感情尺度」、「OECD生徒の学習到達度調査(PISA調査)で使用された学校所属感と生活満足度の尺度」を用いて、やり抜く力(努力の粘り強さ、興味の一貫性)、自尊感情、学校満足度、生活満足度を評価し、各尺度の得点の関連を調べました。
その結果、以下3点を新たに明らかにしました。
1)粘り強さが高い児童ほど、自尊感情が高く、学校満足度及び生活満足度が高くなる
2)粘り強さの高さと学校満足度の高さの関係は、自尊感情の高さに媒介される
3)粘り強さの高さと生活満足度の高さの関係は、自尊感情の高さに媒介される
これまでは、児童のやり抜く力と生活満足度の関係についてのメカニズムはよく分かっていませんでしたが、本研究により、小学生において、やり抜く力(粘り強さ)と学校・生活満足度との関係が自尊感情を媒介としていることを明らかにしました。
本研究の成果を教育実践に応用する観点からは、やり抜く力に関する教育的介入が自尊感情や学校・生活満足度の育成につながる可能性が考えられます。