取組概要
商学部の学生有志が運営するサークルteam.csvが2022年12月11日に御井キャンパスで、地域の小学生を対象とした「一日大学生」体験講座を開催しました。小学生が午前10時から午後4時までの一日を大学生として過ごす体験講座です。
team.csvの名前の由来は、「コンピュータ(computer)」「サイエンス(science)」「ボランティア(volunteer)」で、コンピュータサイエンスを活用したボランティア活動を行っています。商学部商学科の木下和也教授が指導しています。
この講座は現在注目されているSTEAM教育※の実践を意図しており、ネイティブ英語教師と学生による英語で学ぶサイコロの実験と、サイコロを模倣したプログラミングによる数値実験で構成されます。英語教室「Kurume Kids English」と「team.csv」による共同企画で、本学地域連携センターが後援をしています。
※STEAM教育:「Science」「Technology」「Engineering」「Art」「Mathematics」のそれぞれの頭文字を取った、科学・技術・工学・芸術・数学の教育分野を総称した言葉でそれらの教育をICTを通じて行うもの
この講座は今回で2回目の開催となります。また今年は教育関係者を中心に、イベントの様子をオンライン配信しました。
(昨年の様子はhttps://www.kurume-u.ac.jp/site/syougaku/20220105.html)
成果
今年のテーマは「サイコロ」です。あえて「数」としなかったのは子供たちにサイコロのような身近な玩具が高度な数学やコンピュータシミュレーションに関係あるということを伝えたかったからです。
カラフルなサイコロを実際に100回ずつ振って、その出目を大教室の黒板に書いていくという作業を行いました。その数字を合計して平均値を求めると、3.5に近い数字になることを実体験し、このような法則を使って行う数値実験が存在することを学んでもらいました。
なお、ここまでの授業はすべて英語で行いました。ネイティブ講師と学生が楽しく英語で会話しながら子供たちに問いかけるという授業スタイルで教室は楽しく盛り上がりました。
この実験をすべてプログラミングで実施することが次の授業内容です。ここでの特徴は、一般に小学生が体験したことがあるようなブロックプログラミングを使わず、いきなり本格的なプログラミング言語を使って学んでもらったことです。理由はいくつかありますが、一つは英語との関係、もう一つはブロックプログラミングとの構造の類似性を知ってもらい、本格的なプログラミングにも興味を持ってもらうためです。
使用したプログラミング言語は、古い言語であるBASICと、Webサイトに使われるJavaScriptです。全く異なる言語ですが、アルゴリズムが同じであるとプログラムの形が似ていることを体験的に学んでもらうことを意図しています。これは「プログラミング的思考」とは物事の順序や構造を考える基本になる考え方であるということを知ってもらうためのコンテンツでもあります。さらに、JavaScriptのプログラミングでは自分で描いたサイコロの画像を使ってもらいました。お絵描きの要素を取り入れたコンテンツで、子供たちを飽きさせないように工夫しています。
そして、micro:bitを使用したブロックプログラミングによってデジタルサイコロを作りました。実際に手に持って傾けるとセンサーが反応して表面のLEDに数字がランダムに出てきます。画面だけのプログラミングに終わらず、触ることのできる「モノ」を作る体験を楽しんでもらいました。
最後はレポート作成体験です。大学生の宿題の多くが自分で調べて考えをまとめるというレポート形式であることを知ってもらい、今回学んだことを英語でレポートするという課題に挑戦してもらいました。お昼休みのキャンパスツアーと合わせて、この一日で小中学生にとっては「学ぶことの楽しさ」と「大学生」をイメージできたようでした。
今回英語での授業を担当した商学部3年生の河津憲二朗さんは「英語でサイコロの概念や法則、これから出てくる単語などを教えました。アドリブで日本語を交えながら分かりやすく説明することを心がけました。今まで学んできたプログラミングの知識が役に立って、人に教えることで自分の成長にも気付きました。将来は不動産業界に就職して、これから需要が高まるであろうプログラミングと不動産をうまくかけ合わせて何かやりたいです」と話しました。
同じく3年生の木村遼河さんは「教科書を作る際、⼦どもたちがかわりやすようにイラストや画像を多く使い工夫しました。子どもたちが、楽しいから次やりたい!と言って楽しんで積極的に取り組んでくれたのでやりがいを感じました。この活動は、当日だけではなく、企画段階から当日まで様々な準備が必要で、その過程がとても大事だと思っています。商学部の専門科目である『ITビジネス論』でITに興味を持ったので、IT企業に就職して今の経験を活かしたいです」と話しました。
同じく3年生の武田大樹さんは「子どもたちは反応が良くて、のみ込みも早く理解してやっているのがすごいと思いました。先日は高齢者を対象としたIT講座を担当しましたが、今回は小学生が対象だったので、対象者によって教科書や講義では表現を変える必要があると考えました。自分が分かっていることを、相手にもきちんと理解してもらうことが重要なので、使う言葉に気を配りました。私も『ITビジネス論』で、文系でもプログラミングができることを知って楽しく取り組んでいます」と話しました。