取組概要
理学研究科・博士後期課程の坂部 健太さんを中心とする研究開発グループ(京都産業大学、株式会社フォトクロス、国立天文台)は、これまで、神山天文台において可視光線波長域で動作する小型の補償光学装置CRAOの開発を行ってきました。この度、神山天文台・口径1.3m荒木望遠鏡に装着したCRAOによって可視光線波長域で星像を大幅に改善することに成功しました(その結果は、9月18日に開催された研究会「第19回 補償光学研究開発のための情報交換会」において坂部さんが発表しています)。
成果
補償光学装置は、地球の大気によって乱された星の像をシャープな像へと復元する技術が基礎となっており、20年ほど前から赤外線波長域で口径8mクラスの大型望遠鏡に装備されて、天文観測に活用されてきました。しかし、より波長の短い可視光線波長域では、技術的なハードルが非常に高くなり、実現例は多くありません。とくに神山天文台のある日本国内では、大気の状態が悪く、絶えず変動する地球大気によってゆがんだ星像を、地球大気の影響を受ける前(つまり宇宙から地球に届いた直後)の状態に近付けることは容易ではありません。
坂部さんたちのグループでは、そうした困難の克服と、中小口径望遠鏡における小型・安価な装置の実現を目指し、レンズを用いた「屈折式」の光学系によって装置全体を小型化(従来の補償光学装置に比べて装置面積が1/3程度)、また補償光学装置で重要となる波面センサや可変形鏡に市販の光学部品を用いることで製作費用が200万円程度と大型望遠鏡の補償光学装置に比べて製作コストをおよそ1/50程度に抑えてCRAOを実現しました。
この補正によって、より暗い天体の観測が可能になりましたが、今後、さらなる性能向上も期待できると坂部さんは語っています。