取組概要
関西学院大学理工学部化学科の田辺陽教授、松尾憲忠博士、川元百世(大学院修士課程2年)らの研究グループは、日本が世界をリードするピレスロイド系殺虫剤のルーツである「天然ピレトリン」計6種の完全な化学合成に成功しました。
成果
除虫菊の成分である「天然ピレトリン」を人工改変した「合成ピレスロイド」は現在、30以上の商品が市販され、そのバリエーションは、あらゆる医農薬品の中で比類なき例と言えます。「蚊取り線香」から「虫コナーズ」(大日本除虫菊)まで、ピレスロイド系殺虫剤はその高い安全性のため、世界中の農業生産、アメニティライフに貢献し、さらに「オリセットネット」(住友化学)においてはマラリア駆除にも多大な役割を果たしてきました。
しかし、全く意外にも「天然ピレトリン」の正確な化学的性質や殺虫活性は、そのルーツであるにもかかわらず、計6種類の構造が非常に類似しているため、これまで確定できないままでした。ところが一方、「天然ピレトリン」は折からの天然品仕様への回帰トレンドから、実用的にも、乾燥除虫菊ベースで年間1万トンも世界中で栽培され、その利用価値は非常に高いものです。今回の研究では、全6種類の物性が確定でき、そのうち4種に高い殺虫活性があることが、初めて明らかとなりました。
日本が先導するピレスロイド化学の長年の懸案課題(ミッシング・リンク)に、貴重で有意義な解答を提出できたといえます。