取組概要
理工学術院の中田雅久教授、上森理弘研究院講師らの研究グループは、独自に開発した手法により、コチレニンAの全合成(※1)に世界で初めて成功しました。コチレニンAは新規抗がん剤候補として注目されていましたが、その生産菌が増殖能を失ったため、培養による生産・供給は途絶え、化学合成による生産・供給が切望されていました。また、多くの研究者がコチレニンAの化学合成に挑戦したものの、ユニークな構造ゆえに達成困難でした。
本研究グループは、コチレニンAを大きく3つの構造に分けて合成し、それらを繋ぎ合わせることで市販の化合物から25工程で全合成を達成しました。現在、20まで短工程化に成功しており、今後さらに短工程化が進めばコチレニンAの化学合成による量的供給が可能になります。
<ポイント>
・ コチレニンAは新規抗がん剤候補として注目されていたが、培養による生産・供給は途絶えていた。
・本研究グループは、独自に開発した手法を用いてコチレニンAの世界初の全合成に成功した。
・より強力な抗がん活性を示し、副作用のない新規抗がん剤候補の発見に繋がる可能性がある。
※1 全合成
砂糖やアミノ酸などの市販されている化合物から化学反応により多段階の構造変換を行い、抗生物質などを合成すること。
成果
今回の成果は、コチレニンAの生物科学研究のさらなる発展に貢献します。また、コチレニンAの化学修飾を行い、生物活性試験を行うことで、より強力な抗がん活性を示し、副作用のない新規抗がん剤候補を発見する可能性があります。さらに、今回開発した試薬・反応・手法は、今後、様々な化合物の合成において活用されると考えられます。