取組概要
小惑星探査機「はやぶさ2」は、2019年2月22日に小惑星リュウグウ表面に着地し表層試料の採取に成功した。その後、4月5日には衝突装置を用いて人工クレータを生成し、2019年7月11日に2回目の着地を行い、クレータ生成時に地下から表面に巻き上げられた物質の採取に成功したと考えられる。小惑星リュウグウは炭素を多く含むと思われるC型小惑星に分類されており、地球形成後の初期段階で多数の小惑星衝突によって地球に供給された有機物、含水鉱物を、その時の状態で残していると考えられており、本計画で得られた試料の分析により地球上の生命の起源となった物質が初めて明らかとなり、生命の発生条件の解明がさらに進むと考えられる。さらに立教大学では2024年打ち上げ予定の火星衛星探査計画MMXに参加しており、はやぶさ2とともに太陽系形成過程の解明に向けて世界をリードする探査計画を推進している。他方では、太陽系外にも数多くの惑星が発見されており、地球と同程度の大きさで、熱輻射が同程度となっている惑星も見つかり始めている。しかし、このような惑星が地球の様に海洋を持ち、生命を有するような惑星か、金星のように温室効果が進み海洋が失われた灼熱の惑星であるかどうかを判別することはできていない。立教大学では、JAXAによって設置されている「系外惑星紫外分光WG」を主導し、今後の欧米の大型計画では対応できない紫外線による地球型系外惑星観測の実現を目指している。
成果
はやぶさ2は、滞在中に小惑星リュウグウの観測を行い、立教大学が開発を共同担当した光学航法カメラONCの画像を使って既にScience誌4編を含む多数の論文が出版されている。これまでの成果から小惑星リュウグウの形成過程について研究が進められており、このような研究は初期地球への物質供給を考える上で非常に重要である。さらに2020年末に試料が地球に戻り、その分析を行うことによって大きな成果が得られると考えられるが、その前の段階で、はやぶさ2の成功はメディアにも大きく取り上げられ特に2回の着地、人工クレータ実験の際は注目を集めた。
この技術は、日本が世界をリードするものであり、次の火星衛星探査計画にも多くの期待が寄せられている。
2020年末にはやぶさ2が採集した試料が地球に戻り分析が行われ、地球の海洋・生命の素となる物質やその供給過程の理解が進められることになる。さらに火星衛星探査計画でも同様に太陽系における始原的物質の調査が進められることになる。これらの成果を基にして、太陽系外惑星の観測的研究を進め、この宇宙において地球のような惑星が普遍的に存在するか否かという宇宙科学の大きな疑問に答えることを目指していく。