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実施地域

東京都

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取組内容

研究

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実施体制

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連携状況

他大学

日本女子大学

エキシトンダイナミクスの理論計算

2020年6月18日

取組概要

原子・分子レベルで起こる電子状態変化が引き起こす物質の構造変化を解明し、メソ・マクロスケールでの物性変化を予測することは、ナノサイエンスの新たな発展に大きく寄与するものである。計算物理をバックグラウンドに、スーパーコンピュータを利用して、「π共役超分子の化学物理」と「スピンクロスオーバー効果と分子磁性」の研究に取組み、「物質の電子状態」「物質の動的挙動」の解明を目指している。本研究は、外部環境変化によって誘起された分子内・分子間の相互作用や、その応答として現れる構造変化とそれに伴う相転移は何故起こるのか、といった一連の「素過程の組立て」を明らかにする。

太陽電池は再生可能資源である太陽光エネルギーを電気エネルギーへ変換する素子である。中でも有機薄膜太陽電池は、塗布プロセスにより低コストでの作製や形成が容易なデバイスを供給することができる。しかし光変換効率は15%程度であり、実用化のためには高効率化が必要不可欠だ。そのためには、ドナー材料とアクセプター材料といった有機材料自体の高性能化や、合理的なドナー/アクセプター(D/A)界面の設計法を考えなくてはいけない。そこで、キーワードとなるのが、D/A積層構造界面での自由電子と正孔による束縛状態の「励起子」が示す光電変換であり、有機光起電力によるデバイスは「励起子生成と解離」や「生成したキャリアの緩和過程」が重要である。有機薄膜太陽電池の高効率化を目指し、第一原理計算を用いて、理論的・計算科学的に、「励起子生成と解離」や「生成したキャリアの緩和過程」について相界面の電子・分子構造、分子反応の観点から分子レベルで解明する。特に、光エネルギー変換に有効に働く起因子を探索し、自由電子キャリアのメカニズムを考察、つまりエキシトンダイナミクスの解明を試みている。

成果

計算科学とスパコンで社会の課題解決へ貢献、産学連携で研究者の社会思考を醸成という課題で、㈱日本能率協会コンサルティングR&Dイノベーションフォーラムで招待講演を行った。

理論計算は、密度汎関数法などの理論モデルの改善やスーパーコンピュータにみられる計算機能力の向上に伴い、半導体・磁性体・生体分子の分野でもその有用性が認められ、「物性物理」から「分子科学」に至る広範な学際領域でこれを活用した研究が盛んに行われている。理論計算に基づく、分野横断的な研究構想を実行することで、物性物理学的観点や量子論的観点から、ミクロスケールでの幾何構造解析、そしてシミュレーションによる分子機能とその制御機構の詳細な理解、生体分子・エネルギー変換材料・分子磁石などの機能性分子の創成といった、生命科学や有機エレクトロニクスの分野に携わることができるだろう。
計算分子科学における新規で重要な研究分野の開拓も可能であり、物理化学のテーマへの発展に寄与できるものと考える。