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東京都

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研究

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津田塾大学

離散ソボレフ不等式の最良定数

2020年6月25日

取組概要

ソボレフ不等式と呼ばれる20世紀微分方程式論の基礎となった不等式の最良定数と最良関数、具体的には不等式の等号成立条件を求めて、不等式が自然科学や数理工学において果たす役割と応用について研究している。

ソボレフ不等式の最良定数を計算する手法は以下の3つの手順から構成されている。
(1)各種微分方程式および差分方程式の境界値問題を設定し、グリーン関数と呼ばれる積分核を求める。
(2) グリーン関数の性質、特に再生核と呼ばれる積分核としての性質を調べることによってソボレフ不等式を導出してその最良定数と最良関数を求める。
(3)ソボレフ不等式及び最良定数の工学的意味を理解し、工学の諸分野の数学的基盤を確立する。

最近の研究から具体例を挙げると、正4、6、8、12、20面体および切頂正4、6、8、12、20多面体上の離散ラプラシアン行列を設定し、対応する離散ソボレフ不等式を導出してその最良定数を求めた。特に切頂正20面体またはC60フラーレン上の離散ソボレフ不等式を導出して、その最良定数を求めた。離散ソボレフ不等式はC60フラーレンにおける炭素分子の平衡位置からのずれをエネルギーで評価する不等式であり、その最良定数はC60フラーレンの「硬さ」を表す1つの指標である。

成果

ソボレフ不等式は微分方程式の分野において重要であるだけでなく、自然科学や数理工学への応用が期待されている不等式である。グリーン関数の具体形、そしてソボレフ不等式の最良定数を求めることで、工学の諸問題の数学的基盤を構成できた。本研究成果は応用数理、数学、物理などの論文誌に発表している。またグリーン関数についての和書は少ないため、現在「グリーン関数(仮題)」を執筆中である。

C60フラーレンには1812個の異性体があることが知られている。各種異性体上の離散ソボレフ不等式を導出してその最良定数を求めることにより、異性体の力学的安定性についての数学的基盤が得られると期待している。本研究の対象であるグリーン関数とソボレフ不等式およびその離散化は、その数学的価値のみにとどまらず、弾性体力学や電気回路などの古典的問題から、C60フラーレンや機械学習などの最先端に至るまで幅広い関連や応用が指摘、期待されている分野である。

※この取組は、提言・事例集『私立大学理工系分野の研究基盤の強化と向上-科学技術イノベーションの推進に向けて-』で紹介した研究事例です。
詳細等は関連リンクをご覧ください。

関連リンク

https://www.shidairen.or.jp/topics_details/id=2822