取組概要
本研究は、人体表面(衣服上あるいはその近傍)に分散配置された各種センサおよびアクチュエータ等を個別の配線なしに簡単にネットワーク化し、人がおかれた環境中(室内)のネットワークや周辺機器とも相互に情報の伝送を行うための標準的・汎用的な基盤技術を実現することを目指している。さらに、これを応用した特異なウェアラブルシステムの応用研究も実施している。スマートウォッチのようなそれ単独で機能する一定規模のまとまった電子回路ではなく、単純な機能しか持たない小さな素子・回路を大面積にわたって多数分散させることで、従来実現しえなかった機能の実現を目指すものである。ムーアの法則に代表されるように、より高機能・大規模な電子回路をより小さいチップに詰め込むことを追求する。現在のエレクトロニクスの主流の価値観から転換しようとする野心的かつ独創的な研究領域を開拓している。
成果
導電性繊維素材で構成した二次元伝送媒体を用いるウェアラブル給電・通信システムを実現した。衣服など布素材をベースに電子回路を構成する研究事例は多数存在するが、その多くは通常の電子回路基板の硬い材質を柔軟な繊維素材に置き換えるアプローチである。本研究ではそれらとは異なり、布を1本のケーブルの代わりとして使用する。布上に多数の信号線を並列に配置するのではなく、布の表と裏をそれぞれ導電性として、この2面間に印加する電圧だけで各電子回路への給電と通信を実現する手法を確立した。
南山大学としては初となる南山学園を出願人とする特許の出願・登録に至っており、民間企業からの受託研究を実施するなど、産業的な実用化の期待の大きい成果を得るとともに、JSTさきがけ研究に採択されるなど、研究領域としての将来性についても評価されている。
※この取組は、提言・事例集『私立大学理工系分野の研究基盤の強化と向上-科学技術イノベーションの推進に向けて-』で紹介した研究事例です。
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