取組概要
我々はIoT・AI時代において最先端のプラットフォーム技術、センサ技術を駆使した革新技術を生み出す研究開発を行なっている。特に、脳波、心拍(自律神経)センシングと解析による、人の感情推定技術の応用は重要なテーマの一つである。人の心は刻一刻と内的・外的な影響で複雑に変化することから、これらの変化を計測し、特徴を分析し、基礎的な法則を発見し、さらにモデル化や学習や予測をすることで、工学的な応用を可能とする。実現のためには、心理学、認知科学の知見や、分析のための信号処理、情報科学、センサ工学、など様々な分野の知見の統合が必要である。近年ではコンピュータの基盤技術による大量データ分析が可能となっていることから、これらの技術を積極的に活用し、これらの目的を達成しようとしている。また、ロボットなど具体的なアプリケーションを用いた実証的な研究や応用を行なっている。我々はこれらの必要性を満たすため、研究室メンバで様々な具体的なアイデアと議論を継続・発展させ、それに基づいたアプリケーション開発と評価を重ねると同時に、研究室のメンバのみならず、様々な分野の専門家や研究者や企業と協力して、基盤システムの技術を駆使したプラットフォームづくりを並行して研究を進めている。
成果
脳波・心拍などの生体計測と解析により人の気持ちをリアルタイムに把握できると、多様な応用が可能である。まず、自分自身の気持ちを知ることでストレス状態などの感情をコントロールすることが可能となる。また、視覚、聴覚、嗅覚、味覚などといった人の感覚の刺激と、感情の関係がわかることで、これらを利用した感情の制御を行うことができる。すでに、気持ちを逆立てたり、安定化させる色、味、匂いなどが個人で異なることがわかって来ている。また、外部の工業物であるロボットや物の振る舞いと人の気持ちの関係がわかれば、人の気持ちをリアルタイムに考慮した動作設計が可能となる。研究室では人の気持ちによりそった声がけロボット、励ましロボット、パーソナルスペースの調整のロボットなど、人の気持ちをリアルタイムで分析してそれにそった動作を行うロボットの開発を行っている。現在日本は少子高齢者社会にあり、Society5.0などが目指す、一人一人が QoLを向上させことができる技術として、期待されている。
感情は人類が古来から育ててきた社会適応やコミュニケーションのための道具である。この原理や応用方法を明らかにし、社会に役立てることは大変意義があることだと考えている。人や社会のQoLの向上に役立てるための実現方法を工学的に考え、それを応用する社会の姿を多様な人々と議論しつつ、ダイバーシティを豊かに実現する社会に貢献できる技術としてしてゆきたい。
※この取組は、提言・事例集『私立大学理工系分野の研究基盤の強化と向上-科学技術イノベーションの推進に向けて-』で紹介した研究事例です。
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