取組概要
久留米大学医学部小児科学講座の水落建輝講師と久留米大学病院炎症性腸疾患センターの光山慶一教授、株式会社医学生物学研究所(MBL)を中心とする研究グループは、小児炎症性腸疾患を血液で診断する多施設研究を行い、血清PR3-ANCAが小児潰瘍性大腸炎の診断に有用であることを明らかにしました。当研究は、過去最大規模で日本の小児炎症性腸疾患の血液診断マーカーを検討し、その研究成果は専門英文誌のJournal of Gastroenterology and Hepatology(オンライン版)に掲載されました。
成果
炎症性腸疾患とは潰瘍性大腸炎とクローン病の2つに大別され、腸などの消化管に炎症が起き、慢性的な下痢や血便、腹痛などの症状を伴う病気の総称で、近年、日本でも増加しています。現在では潰瘍性大腸炎とクローン病を合わせて約30万人の患者がいると報告され、日本で最も多い特定疾患(指定難病)となっています。小児でも炎症性腸疾患は増えていますが、診断には消化管内視鏡検査(大腸内視鏡など)が必須のため、体の小さな小児には検査の負担が大きい問題点があります。血液検査など体に負担の少ない診断マーカーが小児では特に望まれていましたが、今回、小児潰瘍性大腸炎の血液診断マーカーとして、PR3-ANCAという抗体が有用であることを日本で初めて明らかにしました。
今後はPR3-ANCAが小児潰瘍性大腸炎の血液診断マーカーとして広く利用され、体の小さな小児が負担の少ない方法で、早期に診断されることが期待されます。