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京都産業大学

金星大気中の自発的な波の励起を初めて再現 -地球シミュレータを用いた世界最高解像度のシミュレーション

2021年6月29日

取組概要

高木征弘教授らの研究グループは、神戸大学、奈良女子大学、東北大学との共同研究により、金星の大気の流れをシミュレーションする大気大循環モデル「AFES-Venus」を、地球シミュレータを用いて世界最高解像度で走らせ、小規模な波の自発的な励起を再現しました。金星大気全体を20kmの水平刻み幅で計算することで、惑星規模の波からの小規模な波が自発的に励起されることを見出し、そのメカニズムを明らかにしました。

【ポイント】
・スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を駆使して、世界最高解像度で金星大気大循環モデルのシミュレーションを実現しました。
・地球大気中で見られるジェット気流や低気圧からの大気重力波の自発的な励起は、金星大気中ではより大規模な惑星規模の熱潮汐波から生じることを示しました

成果

本研究では、金星大気を世界最高解像度で数値シミュレーションすることで、地球大気で生じるジェットの出口からの自発的な大気重力波の励起が、金星大気でも生じていることを示しただけなく、金星では熱潮汐波という惑星規模の波動から大気重力波の自発的励起が生じることを初めて示し、そのメカニズムの解明を行いました。AFES-Venusは過去に観測された金星大気の様々な現象を再現している点でも、今回シミュレートされた現象が実際の金星で発生している可能性が高いと考えられます。

今後は、本研究で新たに発見された小規模な大気重力波やその励起過程が、金星探査機「あかつき」によって観測されることが期待されます。あかつきの紫外線画像では、今回の研究で大気重力波が励起されている、雲層上端の高度70km付近を観測することができます。金星に近づくタイミングでは、高分解能の画像が取得できるため、小規模な波の構造を捉えられる可能性があります。また、励起された波の働きをモデルや観測でさらに詳しく調べること、特にデータ同化の手法を活用することで、金星に吹く風の謎の解明が大きく進むと期待されます。

これまでの金星気象学は、観測データもシミュレーションも時間、空間分解能が低く、小規模で時間変動の大きな現象の理解は進んでいませんでした。本研究は、AFES-Venusの高解像度シミュレーションを用いることで、金星気象学を、細かく速い現象への議論が可能な、新たな段階に引き上げたと言えます。今後も、あかつきとの連携によって、地球の姉妹星でありながら、分厚い硫酸雲のベールに包まれた、金星気象の謎が解き明かされることが期待されます。

関連リンク

https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2021_release/20210618_345_release_ira01.html