取組概要
工学部土木工学科平林由希子教授らの研究チームは、適応策を実施した場合でも気候変動や社会経済の発展により洪水被害が現在より増加してしまう、「適応の限界」が生じる地域を特定し、適応策を実施した場合における現在からの洪水被害の増加分を世界で初めて定量的に評価しました。
これまで、洪水リスクを軽減するための適応策の有効性を調べた研究はありましたが、適応策を実施した場合でも適応しきれずに、現在よりも洪水被害が増加する「適応の限界」を定量的に評価した研究はありませんでした。
本研究では、適応策を実施した後でも、現在よりも増加する洪水の被害額を全世界の地方行政単位(県や州単位など)で評価しました。適応による被害の軽減額(便益)がそれを実施するための費用より大きい場合に適応すると想定し、適応する場合は便益と費用の差である純利益が最大となるように適応するレベルを算定しました。これにより、費用的に適応しにくい地域を明らかにします。
成果
気候変動への適応が完了する前に発生する被害が大きく、途上国では財政支援の強化で被害を大幅に削減できる可能性があるため、国際的な支援を含む早急かつ適切な適応策の実施が期待されます。