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立教大学

大強度加速器×超高精度“温度計”で原子核を作る力に迫る —風変わりな原子からのX線の測定精度を飛躍的に向上—

2022年4月7日

取組概要

立教大学理学部 山田真也 准教授、一戸悠人 助教、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄)先端基礎研究センターハドロン原子核物理研究グループの研究副主幹 橋本直、学校法人中部大学(理事長:飯吉厚夫)工学部創造理工学実験教育科・ミュオン理工学研究センターの准教授 岡田信二(理化学研究所 客員研究員)らの国際共同研究グループは、大強度陽子加速器施設 J-PARC(※1)で供給される世界最高強度のK-中間子ビームと超高精度“温度計”を用いて、K中間子(※2)に働く「強い相互作用」の測定精度を飛躍的に高めることに成功しました。

※1 大強度陽子加速器施設 J-PARC
茨城県東海村にある大強度陽子加速器と利用施設群の総称。世界最高レベルの強度の陽子ビームで生成する様々な二次粒子ビームを利用して、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの最先端学術研究及び産業利用が行われている。その中のハドロン実験施設では、高エネルギー陽子ビームを金の標的に当ててK中間子やπ中間子などの二次粒子ビームを生成し、素粒子や原子核ハドロンの実験的研究が行われている。J-PARCはJapan Proton Accelerator Research Complexの略。

※2 中間子、K-中間子
クォークと反クォークが、強い相互作用で結びついた状態が「中間子」である。4種類あるK中間子のうち負電荷の「K-中間子」は、ストレンジクォークと反アップクォークで構成される。

成果

本研究により、K-中間子とヘリウム原子核間の「強い相互作用」に関して、これまでにない高精度な情報を得ました。今後、様々な原子に対して同様の手法による系統的な測定を進めることで、「強い相互作用」の定量的理解が飛躍的に進展すると期待されます。一般にクォークで構成される粒子を「ハドロン」と総称しますが、負の電荷をもつハドロンと原子核の「強い相互作用」は、中性子星の構造を考える上でも重要な役割を果たすことが指摘されています。中性子星は巨大な “原子核” とも言われ、中心部では超高密度が実現していると考えられます。しかしその超高密度物質の性質はわかっておらず、近年は特に、ストレンジクォークを含んだ負電荷ハドロンの役割が議論の主役となっています。今後、本研究で確立した手法を用い、K-中間子のみならず、シグマ粒子(Σ-)や、グザイ粒子(Ξ-)が束縛した原子からのX線を測定することを目指します。近年発見されたK中間子束縛原子核の研究と併せ、中性子星内部の理解につながる「強い相互作用」の研究の発展が期待されます。

本研究は、TES検出器の技術開発で世界をリードしているアメリカ国立標準技術研究所(NIST)との国際コラボレーションで、原子核・ハドロン物理分野だけでなく、原子・分子物理分野や、X線天文衛星への搭載に向けTES検出器開発に携わっている宇宙物理分野の研究者との分野横断チームで実施しました。本成果は、多くの荷電粒子が飛び交う過酷な放射線環境下で展開する高精度X線観測実験の重要なマイルストーンとなりました。

本チームは、この実験を契機に、ミュオン原子X線測定による基礎物理法則の検証や放射光施設でのX線吸収端測定による地球・環境科学の研究など、TES検出器を用いた様々な量子ビーム実験に着手しています。現在、我々は、より幅広い分野のX線分光実験を実現するため、より広範囲のエネルギーのX線に対応したTES検出器開発も進めています。

関連リンク

https://www.rikkyo.ac.jp/news/2022/03/mknpps000001wdb7.html