取組概要
電動キックボードに代表される個人用の乗り物「パーソナルモビリティ」が普及の兆しを見せており、今後予想されるさまざまなニーズに応えるために、豊富な形状と安全性が求められています。
法政大学デザイン工学部 Seong Young ah客員准教授、明治大学理工学部 新山龍馬専任講師、宮城大学事業構想学群 佐藤宏樹准教授、東京大学大学院工学系研究科 鳴海紘也特任講師、川原圭博教授、東京大学大学院情報学環 筧康明教授、株式会社メルカリmercari R4D山村亮介らの研究グループは、poimo(ポイモ)と呼ばれる、独自の風船構造を持ち、軽量でさまざまな形状を実現可能なパーソナルモビリティのシリーズを開発してきました。
今回、この研究グループは、風船構造モビリティの乗車スタイルに合った、クッション型のやわらかいコントローラ(操縦装置)と、安定した乗車が可能なソファ型モビリティの実用化に向けた試作機を開発しました。
法政大学・明治大学・宮城大学・東京大学大学院工学研究科の研究チームは主にモビリティのボディ設計を担当し、東京大学大学院情報学環・株式会社メルカリの研究チームはやわらかいコントローラの設計と実証実験を担当しました。
成果
新型poimoは、4輪を備えた安定性の高いソファ型となっており、旧型poimoのようにバランスをとる必要がなく、誰でも簡単に乗ることができます。そのような幅の広い構造を実現するために、ドロップスティッチ布と呼ばれる丈夫な布地で作られた風船構造の軽量な板を5枚重ねる構造としました。また、電動車椅子用の駆動モジュールを採用することで、可搬重量や登坂性能、走行時間が改善されました。
また、直感的な操縦を可能にするため、通常の乗り物に見られるようなハンドル・リモコン・ジョイスティックなどの硬い材料を利用した入力インタフェースではなく、柔軟材料によるセンシング技術を活用したクッション型コントローラを開発しました。クッションの両端を同時に握ることで直進、左右どちらかを握ることでそれぞれ左右の旋回が可能です。クッションの内部には導電性のスポンジが埋め込まれており、握ったことによる電気抵抗(インピーダンス)の変化を計測することでセンシングを行います。クッションは、手で握るだけではなくネックピローとして首を預け、頭を傾けた方に車体を動かすというような使い方もできます。やわらかい操縦装置は、ぶつかっても人間を傷つけないという特徴もあります。
さらに、poimoの社会実装を進めるために、野外での走行実験を実施しました。まず予備実験として、東京ポートシティ竹芝と鹿島スタジアムにおいて試乗会を行いました。幅広い年齢層の約200名の参加者が試乗を行い、一般ユーザーでもすぐにpoimoを操作できることが実証されました。次に、より現実的な環境での検証を行うために、ハウステンボス(ヨーロッパ・オランダの伝統的な石畳のあるテーマパーク)で走行実験を行いました。この実験では、開発者らが約48時間にわたってpoimoに乗り、凹凸のある不整地路面でも快適に走行できることを確認しました。
研究グループではこれまで、風船構造の乗り物自体に加え、「小さくたためる」「オーダーメイドできる」など、従来の乗り物では実現できない風船構造ならではの利点を提案してきました。今回、実用化への課題・目標が複数達成されたことにより、poimoの社会実装がより現実的になりました。
今後、さらなる実証実験とユーザーからのフィードバックを元に、操作性・信頼性・安全性などを向上させていく予定です