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研究

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健康医療

慶應義塾大学

D型トリプトファンが腸内の病原菌の増殖を抑え腸炎を予防することを発見-腸内環境を改善する新規機能性素材の開発に期待-

2022年8月19日

取組概要

慶應義塾大学、明治ホールディングス株式会社を中心とする研究グループは、D-アミノ酸の一つであるD-トリプトファン(D-Trp)が腸内の病原細菌や病原性片利共生細菌の増殖を抑え、腸炎を予防することを発見しました。本研究は慶應義塾大学薬学部の金倫基(きむ ゆんぎ)教授、明治ホールディングス株式会社を中心とする研究グループの成果です。

L-アミノ酸は、タンパク質の構成要素として機能するため、あらゆる生命に不可欠です。対照的に、L-アミノ酸の鏡像異性体であるD-アミノ酸の機能については長い間不明でした。しかし、D-アミノ酸も生体内に存在し、哺乳類や微生物の生理機能に重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。D-アミノ酸は主に細菌によって作られますが、腸内細菌によっても生成され、強力な殺菌分子として機能することが知られています。そのため、D-アミノ酸は腸内で有害な細菌に直接的に作用し、腸内環境を健全に保つ役割を果たしているのではと考えました。

本研究では、D-Trpが腸管病原細菌の増殖を抑え、腸炎を予防することを明らかにしました。また、D-Trpが、菌体内のトリプトファン代謝を変化させることにより腸管病原細菌の増殖を抑制していることも分かりました。以上のことから、D-Trpは腸内環境を改善するモジュレーター(変動因子)として機能することが示唆されました。

D-アミノ酸が細菌の必須構成成分であることは以前から知られていましたが、哺乳類においても、神経伝達の調節や腎機能の向上、さらにタンパク質機能への影響など、多様な生理機能を有することが明らかになってきました。本研究成果から、D-Trpが腸内の病原細菌や病原性片利共生菌に直接作用し、これらの増殖を抑制するというD-アミノ酸の新たな機能が解りました。

成果

D-Trpは、腸内環境を改善する新規機能性素材としての開発だけでなく、腸管病原細菌による感染症や炎症性腸疾患などの腸炎に対する予防・治療への応用も期待されます。

本研究成果は2022年8月2日(米国東部標準時)に国際学術誌『iScience』(電子版)に掲載されました。

関連リンク

https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2022/8/19/28-126403/