取組概要
カラスは仲間を個々に識別し、様々な相手と優劣(強い・弱い)とよばれる緊張関係や、毛づくろいを交わし合う親和関係を構築するなど、複雑な社会をもつことが明らかになっています。ヒトを含めたさまざまな動物において、緊張や親和関係をもつ相手とのコミュニケーションには、脳の活動だけでなく、心拍数の変化などの身体にも反応が伴い、脳と身体が相互作用的にはたらいていることが知られています。しかし鳥類では、コミュニケーション場面における身体のはたらきはわかっていませんでした。
慶應義塾大学大学院社会学研究科の大学院生 竹田和朗、高橋奈々と、同大文学部 伊澤栄一教授らは、着脱式の無線心電記録技術を確立し、実験室において、優劣関係にあるハシブトガラス2羽が対面している際の心電位を、無拘束・自由行動下において記録、解析を行いました。その結果、①優位オスと対面した劣位(弱い)オスには心拍低下と副交感神経の活性が生じ、一方、その相手である②優位オスの心拍は変化せず、交感神経の活性が生じていることを発見しました。
成果
この発見は、社会的コミュニケーション場において、鳥類にも相手との関係に応じた身体反応が生じるしくみが進化していることを世界で初めて示したものです。
本研究成果は、2022年10月19日(英国時間)に「Royal Society Open Science」オンライン版に掲載されました。