取組概要
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の早野元詞特任講師は、米国ハーバード大学医学大学院のデイビッド A シンクレア博士らとの共同研究にて、DNA損傷によって誘導されるエピゲノムの変動が後天的に老化を制御する仕組みを明らかにしました。本研究では、60名以上の研究者が参加する大規模な共同研究において、新しい老化のモデル動物であるICE(for Inducible Changes to the Epigenome)マウスを作成し、以下の点を報告しました。
- ① DNA配列の変化や遺伝子変異の蓄積ではなく、遺伝子の使い方を決めるエピゲノムが老化の速度やタイミングを決定する。
- ② ストレス(DNA損傷)は、エピゲノムとして細胞や臓器の中で記憶されて老化を制御する。
- ③ 生物学時計はストレスによって加速し、Oct4, Sox2, Klf4(山中因子)によって巻き戻すことが可能。
- ④ エピゲノムを介した遺伝子の使い方に異常が生じて、脳や筋肉などの臓器機能が低下する。どの遺伝子を適切に使用するのか、という個々の細胞や臓器の特性(アイデンティティ)が喪失されることが老化の原因になる。
成果
今後、本研究成果が老化や疾患を予測する技術の開発や治療法の開発に発展することが期待されます。
本研究成果は、2023年1月12日(日本時間)に、米国科学雑誌 Cell(オンライン版)に掲載されました。