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共同研究

慶應義塾大学

一対の神経細胞が一生の“泳ぎ”のリズムを生み出し続ける!?

2023年2月9日

取組概要

慶應義塾大学大学院 理工学研究科の修士1年 内海円花、同大学理工学部の岡浩太郎教授、堀田耕司准教授らは、カタユウレイボヤ発生初期のリズミカルな自発運動を生み出す一対の運動神経細胞が、発生に伴い7段階の神経活動変化を示すことを明らかにしました。


歩行や遊泳といったリズミカルな運動パターンは、脊髄に位置する中枢パターン生成器(CPG)によって生成されています。しかし、この回路を司る個々の神経細胞の動態や、リズミカルな神経活動を担うCPG回路の形成機構は未だ解明されていません。

本研究では、脊椎動物に最も近縁であり、細胞系譜や幼生期における全神経接続情報が判明しているカタユウレイボヤを用いて、この謎に迫りました。カタユウレイボヤの遊泳幼生は、尾部の筋肉を左右交互に収縮させることで尾を振って泳ぐことができます。我々の先行研究から、ホヤ後期尾芽胚期での初期運動行動であるEarly Tail Flick(ETF)のリズムは、運動神経節にある左右一対の運動神経細胞MN2 によって生成されることがわかりました(Akahoshi et al., 2021)。しかし、この研究では孵化前(St.24)までのMN2の神経応答を観察したにすぎず、MN2が遊泳幼生期以降における尾を左右に振る際のリズムの生成に関わっているかどうかは不明でした。

成果

本研究では、左右MN2のカルシウム応答の長時間計測に成功し、その発火間隔や同期・非同期などを基準にして、MN2の発火パターンは7つのフェーズに分けられることを示しました。フェーズⅢまでにMN2のリズムは数十秒周期に収束すること、フェーズⅤから左右のMN2のリズムが同期し始めること、フェーズⅥでは周期が伸びること、最後に、変態により尾部が退縮して運動が停止し神経活動が必要なくなったフェーズⅦにおいても、MN2は発火し続けました。これにより、ホヤの尾が動き始めてから、遊泳運動を経て、尾がなくなる時までの、遊泳幼生の一生における尾の運動をMN2が制御し続けていることが示唆されました。本研究成果は、CPG回路の形成過程の解明に寄与する重要な発見と期待されます。

研究成果は、2023年1月13日にスイスの科学誌『Frontiers in Cell and Developmental Biology 』にオンライン掲載されました。

関連リンク

https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2023/2/2/28-135216/

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