取組概要
医学部解剖学講座の川島友和准教授らの研究グループは、体内配置が反映された3次元実例モデルを使用して心臓刺激伝導系ペーシングの画像シミュレーションを世界で初めて実施、それによって従来使用されてきた2次元簡易モデルに基づいた理解を訂正するとともに、刺激伝導系ペーシングにおける実際のペーシング部位と新しい概念を明示しました。
従来の右室心尖部ペーシングや両室ペーシングに取って代わる、より生理学的ペーシングとして、ヒス束や左脚を直接捕捉する刺激伝導系ペーシングが行われるようになりました。これは、透視下でおよその解剖学的指標を参考に、心内電位に基づきペーシングリードの埋め込みを行うというもので、この技術に対する検証と評価が必要です。従来使用されてきた心臓刺激伝導系の簡易的な平面模式図では、この刺激伝導系ペーシングにおいて誤解を招いたり、結果の解釈を困難にさせていました。刺激伝導系を臨床画像で可視化する特異的マーカーが存在しないことも一因となり、透視下で行われるペーシングでは不明な点が多かったことによります。
成果
今回、研究グループは、最近開発した体内・心内刺激伝導系3次元配置を可視化する技術を用いたペーシングのシミュレーションによって、実際のペーシング位置が異なることや訂正が必要なことを明らかにしました。
本結果は、不整脈治療のみならず、循環器学の様々な生理現象や疾病予後の理解にも大きく役立つものと考えられます。また、人体のあらゆる領域に関しても、新しい解剖学地図の再作成の必要性と重要性を示しています。