取組概要
野外環境中には多くの生物からこぼれ落ちた遺伝子情報があふれている。こうした微量な「環境核酸」(環境DNAおよび環境RNA)を手掛かりに生物種の分布や生物量、さらには生理状態までも推定する技術が環境核酸分析である。新規技術開発や更新・精緻化が研究の目的であり「すくってきた水から生物多様性の観測を可能にし保全や資源管理に利用できる実用技術として社会実装すること」が最終目標である。
環境DNA分析は龍谷大学と総合地球環境学研究所の研究者(現・神戸大学)が独自の着想をもとに2009年に日本国内で初めて研究を開始した若い技術分野である。龍谷大学は生物種の検出のみならず、種内の遺伝的多様性も「水から」の分析を可能にしてきた。近年では種の存在のみならず「生物の状態」まで知ることを狙い、環境RNA分析も開始したことで、総合的な「環境核酸分析」へ発展しつつある。これによりDNAだけではわからない、繁殖活動や病原菌への感染といった情報まで得られるようになると期待されている。本学は国内では最も早くから、世界的にも最古参に近いグルーブで、現在も世界をリードする研究を推し進めている。
成果
龍谷大学は先進的な技術開発の傍ら、社会実装を強く進めている。学内に「生物多様性科学研究センター」を設置し、かつ、産学連携部署を介して「環境DNA実用化研究会」を定期開催するなど、企業や公共団体への技術提供・コンサルティング・共同研究を進めている。また、初期から環境DNA分析に取り組んできた国内研究者が理事となり、一社)環境DNA学会を2018年に設立した(事務局は本学の多様性センター内に設置)。
世界的には環境DNA分析の「全自動化」も進められつつあり、現場に設置してデータを送信できるデモ機が出来上がっている。生物の分布と状態をパソコンの前で「リアルタイムモニター」して保全や資源管理に即座に役立てるという未来もそう遠くないのかもしれない。
※この取組は、提言・事例集『私立大学理工系分野の研究基盤の強化と向上-科学技術イノベーションの推進に向けて-』で紹介した研究事例です。
詳細等は関連リンクをご覧ください。