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実施地域

東京都

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取組内容

研究

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実施体制

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連携状況

他大学

東京農業大学

マウス卵子形成機構の解明に向けて

2020年9月23日

取組概要

哺乳類の生殖細胞形成機構を理解し、その機能を引き出し活用することを目的とする。

体外培養技術は、体内で起こる複雑な生命現象を顕微鏡下で可視化するため、これまでブラックボックスとされてきた様々な細胞の分化・発生過程の解明に貢献する有用なツールである。このツールを使って私たちはこれまでに、哺乳類の卵子形成機構を解明することを目指して、マウス胎仔の未分化な生殖細胞から卵子形成の全過程を再現する体外培養系を世界に先駆けて確立してきた。また、哺乳類の未分化生殖細胞はY染色体の有無などの遺伝的な性によらず、精子にも卵子にも分化できる「可塑性」を有していますが、ゲノムインプリンティングと呼ばれる塩基配列の変化を伴わない化学修飾である「エピジェネティック修飾」が生じることで、「不可逆」な違いが生じることを突き止めました。現在は、成熟卵子に必要な物質的な基盤の解明、加えて、精子あるいは卵子の特異的エピジェネティック修飾が生じる機構の解明に向けて研究している。

成果

私たちの卵子形成の体外培養系は、マウスiPS細胞から成熟卵子を産生する研究成果にも波及している。この研究は、世界の科学研究10大ブレイクスルーにも選出され、社会的インパクトをもたらした。私たちの研究成果は、卵子形成機構の研究や生殖細胞異常の原因究明のみならず、実験動物を使わずに生殖毒性試験を行うツールになることが期待されている。

哺乳類の生殖細胞をめぐる基礎研究の成果は既に社会に浸透している。例えば、1970年に実験動物であるマウスで初めて体外成熟・体外受精系が確立したのを契機に、1978年にはヒトで体外受精由来の新生児が誕生している。我が国でも、近年では新生児の18人に1人が何らかの生殖補助技術を介して誕生すると報告されている(2018年厚生労働省)。また、肉牛や乳牛も99%以上が人工授精や体外成熟・体外受精により生産されており、私たちの社会に生殖補助技術は不可欠となっている。一方で、生殖補助医療技術の安全性については議論の余地が多分に残されている他、不妊症の原因についても依然として不明な点が多く存在する。私たちの基礎研究の成果はこれらの課題に対して客観的な知見を提供することが期待されている。

※この取組は、提言・事例集『私立大学理工系分野の研究基盤の強化と向上-科学技術イノベーションの推進に向けて-』で紹介した研究事例です。
詳細等は関連リンクをご覧ください。

関連リンク

https://www.shidairen.or.jp/topics_details/id=2822